エイプリルフールについて考える

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 昨日はエイプリルフールでした。
 嘘をついても良い日、という風に一般的には認知されている日です。

 中学生の頃に読んだ江戸川乱歩さんの本に「プラクティカルジョーク」を趣味にしている人物の話が出ていました。
 「ペテン師と空気男」という題名の短い小説でした。
 電車の中で口から黒い糸を出している人物がいて、たまたま乗り合わせた主人公が「何をしているのか」と尋ねると、その人物は「胃の消化に関する実験をやっている」というような返事をし、さらに突っ込んで尋ねると、「金柑だけを食べており、胃袋には、糸で垂らした小さな容器が入っている、その容器を後で取り出して、胃の中の消化物がどうなったかを調べるのだ」という主旨のことを説明するのです。
 よくよく聞くとそれは手の込んだ冗談で、黒い糸の先には何もない。単に口に入れてあるだけで、自分の姿に関心を持つ人をからかうためのセットだという話。
 物語はその後もしばらく続いて、件の人物は最後は新興宗教の教祖となって多くの人をだますのですが、ジョークも規模が大きくなると新興宗教にもなれるという話です。だまされる方も壮大なジョークの主に自分の判断を任せてしまうことで精神的な疲労から解放される(心の苦労から楽になる)という道を選択するので、悪い気はしていません。ある意味エーリッヒ・フロムの『自由からの逃走』に似た心境なのかも知れません。ちなみに電車の中の主人公はその教祖の魅力の虜になってしまい、そのまま秘書か何かになるというオチだったと思いますが、子どもながらに新興宗教とは所詮そんなものかも知れないなと妙に納得したことを覚えています。

 最近は人をだます、はめる、ということはあまり良い行いではないという空気があるように思います。
 確かに悪意のある嘘はいけないと思いますが、さもありなんと思わせる軽い冗談(誰も傷つけないような)はたまにはあってもいいのではないか、せめて4月1日ぐらいは・・・と思っています。
 とはいえ、なかなかそういう軽いノリで人に嘘をついて、後からそれが嘘だとわかっても笑って許してもらえるシチュエーションはなかなかないものですね。
 私はちなみにフェイスブックで、年齢詐称の誕生日の話題、フルマラソンのコースがない大会でのフルマラソン出場宣言、今話題の映画の主人公二人が朝市にサイン会に来てる、巨大ネット産業と運送業の買収話、などなどいくつかの嘘を書き連ねて、最後に「嘘でーす」という遊びでお茶を濁しました。
 中には私の年齢詐称を信じて下さった方もあり(本当だと思った、という嘘かも知れませんが)、ひと時楽しく過ごしたエイプリルフールの日でした。お付き合い下さった皆さんに感謝です。

 では明日からの新年度、明るく楽しく元気に乗り切っていきましょう。

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うおづビジネスプランコンテスト

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 新規事業に関する政策が色々打ち出されています。
 魚津市でも創業や新規ビジネスを支援すべく「うおづビジネスプランコンテスト」という催しが初めて開催されました。
 魚津市になんからの関わりのあるビジネスプランを募集するというもので、結構短い募集期間だったように思いますが、47件もの応募があったそうです。
 今日はその中から厳選された8件のプレゼン大会でした。

 プレゼンに先だって経済評論家の森永卓郎さんの基調講演が行われました。
 有名なライザップでの減量経験談で会場を沸かせた後は、本業の経済論をひとしきり。
 いくつか私なりに選んだキーワードを記しておきます。

①1960年から1975年までの高度経済成長時代
②この時代に夫婦に子ども2人の計4人という「標準家族モデル」が作られた。
③〇〇の動きに乗れば必ず儲かる、といううたい文句はこの高度経済成長時代の呪縛による引っ掛けであり、現代の多様化した時代にはありえない。
④標準家族モデルでは、みんな同じライフスタイルでありみんな欲しいものは同じだった。だから隣がカラーテレビを買えばうちも、となったし、戦後のベビーブーム世代が一斉に大人になったので大量生産・大量消費が起こりえた、奇跡の時代だった。(一部筆者補足)
⑤2015年10月の国勢調査では30代前半男性の過半数が非婚。
⑥女性から見た男性の4区分。イケメン、フツメン、ブサメン、キモメン・・・後ろ二つはちょっとひどいなあと思いますが、我々男組も女性に対してコンテストだのランキングだのタイプ分けだのすることを思えば、これで平等ってことかも知れません。しかし話術が巧みだったりお笑いができれば後者もイケるため、森永さん曰く「変な人が増えてきた」ということです。
⑦すなわち多様化の時代ということ。
⑧ここで話題は急転直下。日本が目指すべき経済社会はイタリア型という主張。(色々批判はあるそうですが森永さんはこの主張を10年来持ち続けているとのこと)
⑨イタリア企業の特徴その1。現場への権限移譲による現場の裁量の自由度とスピーディーな意思決定。
 トップが絶対権限でデザイナーと販路と商品を決める。後は現場任せ。トップは口を出さない。たとえばフェンディは年間1500もの新商品を出している。上司がこまごまと口を出さないからこれだけのことがスピード感を持ってできる。おっさんがごちゃごちゃ言って社員の感性を評価せず、評価は市場に委ねる。その中でヒットしたものはどんどん売る。市場に出して売れなければ廃番にする。だからモノマネの国も追いつけない。だから真似されない。
 社員はどうやったら効率が良くなるかをいつも真剣に考えている。その改革案・改善策はどんどん自分で実行できる。上申不要、会議もない。残業はなく夏休みは1か月以上取得するが、それは働かないのではなく一年を11か月で考えて段取りし、効率改善を必死に考えている結果である。それでいて一人当たりGDPは日本とほぼ同じ。高い経済成長を100年以上継続している。(100年前はアルゼンチンに出稼ぎに行くいくらいに経済レベルは低かった)
 価格競争に陥るコモディティ商品よりも付加価値の高いアート商品を考え具現化している。例えば百均でも売っているトイレブラシでも本物の植木鉢っぽくすることで数千円の値段で売れる。
⑩アートとは、岡本太郎氏の定義によれば「見た瞬間、なんだこりゃ!?と思うが、一歩離れると気になってしょうがないもの。よって単に美しいものはアートにはなりようがない」というものだと。
⑪イタリア企業の特徴その2。どんな場面に遭遇しても決して暗くならない。
 だめになる会社の社長は社員に対して経営環境の厳しさとそれに打ち克つための頑張りを求めるばかり。経営環境が厳しいことなど、社員もわかっている。そこへまた悲壮感を漂わせるようなメッセージを発すると、いわば傷口に塩を塗りつけるようなことになる。社員はやる気が失せる。そして会社は社長が宣言したとおり厳しさの中でだめになっていく。・・・森永さん25年間の中小企業研究から発見した「法則」だそうです。
 対してイタリアの経営者の社員向けメッセージのポイントは3つだけ。歌おう、食べよう、恋をしよう。かの国の人たちはリーマンショックのような大変な経済危機が訪れても切り替えが早くうまいそうです。だめなことは引きずらない。起こったことそれ自体は取り戻しようがない。「次行こ!」ということです。

 そういえば、誰かが、植木等のノリで日本経済を再活性化させようではないか、と言っていたような気がします。
 もしかすると森永さんだったかも。

 良い悪い、好き嫌いはあると思いますが、私自身企業経営の支援をしていく上で、色々参考になる点があった講演でした。

 さて、ビジネスプランコンテストの結果は、最優秀賞1名、優秀賞2名、特別賞2名が選出されました。お世話をなさった魚津市及び魚津商工会議所並びに㈱アシステムの関係者の皆さん、大変素晴らしいイベントだったと思います。心から敬意を表したいと思います。
 次回に向けたキーワードとして審査委員長の中尾哲雄さんが「交流」「組合せ」「失敗を恐れずに」ということを講評で仰っていました。
 今回のイベントを嚆矢として、魚津市、さらには富山県東部地域が元気になっていくよう、私もなにがしかの貢献ができればと思っています。差し当たりは地元で行われる創業スクールのお手伝いなどさせていただき、やる気のある人たちの勇気づけ・理論武装・プレゼン支援などができればと思います。

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日経メッセ2017

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 〇〇総合展とか〇〇フェアとかいうのにしばらく行っていませんでしたが、過日久しぶりにその手のものに行く機会を得ました。
 東京ビッグサイトで開催された「日経メッセ2017」。
 街づくり・店づくり総合展という副題がついており、建築・建材、LIGHTNING FAIR、ヘエルスケア&スポーツ、など様々な分野の展示がある中で、私が訪れたのはリテールテックというコーナーとSEKURITY SHOWというコーナーでした。
 リテールテックは文字通り小売業に関する技術展示で、POSレジの高度化に関するようなものが多かったように感じました。またSEKURITY SHOWについては、情報管理に関する最前線の動向を期待して訪れました。

 今回気になったのは以下の展示でした。
①外国で発行されている非接触型ICクレジットカード用の自販機。
 現在日本国内で流通している自販機でICクレジットカード向けのものは国内発行のカード用だそうで、カード決済が当たり前になっている国の人にとっては使いでが必ずしも良くないそうで、そういうお客を取り込めるよう、2020年を視野に入れた展示でした。日本で発行されているICクレジットカードはまだ接触型が大半で、海外ではVISAやMASTERなどが先行して非接触型のICクレジットカードの発行がどんどん始まっているとのこと。(データの裏付けはとってありません)

②指静脈認証
 これは日立さんの展示ブースで見せてもらったものです。
 自分の指静脈情報をあらかじめ登録しておき、買い物の際にそれで本人性を照合することで、財布もクレジットカードも免許証もいらない、というもの。
 自分の指静脈の情報なんていうある意味極めてプライバシー性の強い情報を個々の小売業者に渡すことが良いことなのだろうかとの疑問は残るものの、そういう技術開発がどんどんなされて実用化段階に来ているという事実。
 顔認証や光彩認証や指紋認証など、人体認証方式というのが究極の本人性確認方法として有効だという考え方に基づくものだと思います。デファクトスタンダードを目指して各社しのぎを削って競争していくんでしょうね。

③VR買物
 これも日立さんです。
 自分のお気に入りのショップを仮想空間に作り、そこへ友達を誘って一緒に商品を見て選ぶことができる、というSNSとバーチャルショップの組合せです。そのショップにはAIコンシェルジェがいて自分の好みに合わせた服や飲食料品や本などを提案していくれる、というもので、10年前にはSFとしか考えられなかったような、トム・クルーズのマイノリテイ・レポートのような世界がほぼ現実化してきているという印象を受けました。

④セキュリティコーナーはカメラセキユリティのオンパレードでした。
 どの企業もカメラの展示ばっかり。
 ハードメーカーはルーターなどのネットワーク製品の展示もしていましたが、目につくものの大半はカメラでした。防犯カメラか監視カメラかという議論はあるものの、日本もイギリスのようなカメラ社会になっていくのかも知れません。
 なおNECさんが数少ないネットワークセュリティの展示をされていました。

⑤その他
 IPA(独法・情報処理推進機構)さんの出展で、同機構が出版している啓発関連パンフが多数配布されていました。
 その中で「自動車の情報セキュリティへの取組みガイド」というのがありいただいてきました。昨今クライスラーのGEEPのハッキング実験など自動車のハッキングが話題になっています。仕組みや対策などが書いてありそうなので格好の勉強材料が手に入りました。
 (一財)流通システム開発センターさんも色々パンフ類を配布しておられ、バーコードに関する基礎知識的なものをいただいてきました。勉強勉強。

⑥セレンディピティ
 私が注目云々ではありませんが、最近仕事の関係で「分煙」とか「ドローン」とか「グループウェア」の情報収集が課題になっていました。
 それらを意識していたせいか、関連する商品展示や情報を今回の広い会場の中でピピッピピッと感知することができ、手がかりをいただくことができました。
 日ごろ気にしていると偶然何らかのヒントや手がかりに会えることがあると改めて思いました。

 こういうフェアはほとんど東京ばっかりで、ちょっと遠いし費用もかかりますが、たまには行かなきゃ、と思いました。
 今度はゆっくり行って旧友とお目にかかる時間も作らねば。

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ANAビジネスソリューションによる『ANAの教え方』

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ANAの・・・というシリーズが既に2冊出ており、これは確か3冊目になると思います。
『ANAの口ぐせ』という本を以前読みましたが、この本もとても平易で読みやすかったです。

日本の企業の中でも特に優秀な人たちの集まりであるANA。
そういう優秀な人たちの集まりだからこそできる、うちのような会社には無理だ、という考えもあるかも知れません。

やってみなければわからない。いいと感じたら愚直にやってみれば良い。と私は考えます。コンサル先の企業にもお勧めしています。もちろん、企業規模や許容度合などを考えながら、ではありますが。

たとえば「注意されるのは、当りまえのことばかり」という箇所があります。ベテランと中堅と新人で構成されるチームの中で、ベテランが新人にレベルの高いことを教えるのかと新人は期待したがさにあらず。誰でも知っている当りまえのことばかり教えられるということです。基本の大切さをベテランから口酸っぱく刷り込まれることで、基本がいかに大切か、本当に大切なことは基本動作なんだということに気づかされるということです。
 NTTでも民営化されてしばらくすると、新しいことをやらなければという雰囲気が蔓延していたことがあります。基本をおろそかにすると、事務ミスやお客様からのクレーム多発につながります。その時の社長が「基本動作の徹底」ということをずっと言い続けておられたことを覚えています。当時は何を今さら、と思ったものですが、基本なくして応用も発展もないということだと後々色々な場面で感じます。

その他「今日のことは今日のうちに振り返る」「リーダーは方針を明確に伝えること、方針が明確であれば各現場段階でも判断に迷わない(言わずもがなかも知れませんが、ANAの最優先方針は安全)」「後輩へのフィードバックは書いて残す。記録するのは自分の思いや評価ではなく、事実」「目標は必ず個人レベルに」「PDCA+S(Share=共有)」「絶対ダメなことは気づかいゼロで叱る(厳しく叱る、すぐにやめさせるのは安全に影響を及ぼす行為」など、改めて参考になることが色々ありました。人によって感応するポイントはまちまちでしょうが、企業内教育に関する平易な良書だと思います。

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「クローズアップ現代」元キャスター国谷裕子さんのラジオインタビューを聴いて

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先日、NHK-TV「クローズアップ現代」のキャスターを23年間務められた国谷裕子さんのラジオインタビューが放送されていました。http://www.tbsradio.jp/117978(←こちらのサイトでしばらくは音声が聴けるはずです)
ずっと以前は夜9時半頃からやっており、その頃は帰宅して食事をする時間と重なっていたのでよく見ていました。一つのテーマをしっかり掘り下げる時事情報番組であり、毎日違う話題をよくここまで深く取材して対応しておられるなと、スタッフは複数クルーで構成されていたのでしょうけど、キャスター自身は国谷裕子さん一人だったので、毎回感心して見ていました。
いつの間にかその時間帯での放送がされなくなっていたため、番組自体がなくなっていたものと思っていましたが、昨年の騒ぎで継続していたことを知りました。

私から見た「クロ現」での国谷裕子さんのイメージは、公共放送のしっかり者のキャスターという感じでしたが、このインタビューを聞いて意外な事実を知りました。
小学校5年生までしか日本の学校での勉強をしていなかったため、アメリカの大学を卒業した時点で日本のことは全然知らなかった、と仰っていました。一旦外資系の日本企業に就職したものの、マーケティングはどうも自分の居場所ではないと感じ、10か月で退職、自分探しのためにバックパックをかついでたった一人で世界一周旅行に出かけた。その後NHKの海外からのリポーターのような仕事をしたが、あまりうまくいかず半年で降板、降板を繰り返し、自信喪失。日本人でありながら日本のことはわからないし、日本語の扱いも不自由で、キャスターとしても役に立たず、自分のアイデンティティも確立できず・・・というコンプレックスにさいなまれていた時期もあったようです。(ラジオを聞いての私の印象も含みます)
あの国谷裕子さんにしてそうだったのかと、大変驚き、またその心労に思いが至って涙が出ました。と同時に素の国谷裕子さんの飾らない語り口に触れ、改めて好感が持てました。

その文脈からすると、その後の「クロ現」に出ておられた時期も、日本ってどんな国なのか、日本の人々はこの事案をどう捉えているのか、などのテーマを持ちつつの、自分探しの旅をずっとなさっていたのではないかと感じました。
と同時に、この人の真摯な姿勢に改めて感動を覚えました。
フェアネス=公平さとは何か。
どんな人にも聞くべきことを聞くことがフェアネスである、と国谷裕子さんは言っていました。国民の多くが知りたいと思っているであろうことを聞くこと、そうやってものごとの背景にあった真相へ近づいていく。この人のストレートかつ鋭いインタビューの背後には(放送時間の短さという制約ももちろんですが)、日本のことをよく知らないからもっと知りたいという若い頃のトラウマが無意識のうちにあったのかも知れません。もちろん、相当しっかり勉強して毎回の番組に臨んでおられたことは当然のことであり、素人が「知らないから教えて」というお仕事ぶりでなかったことは明らかです。

「クロ現」を離れてはや一年、もとよりNHK職員ではなくフリーだったそうですが、より自由な立場になり、日本を代表するインタビュアー、ジャーナリストとして今後益々活躍されるよう楽しみにしています。この本ももう一回読んでみなきゃ。

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リンダ・グラットンさんの『LIFE SHIFT』

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 「100年時代の人生戦略」という副題がついています。
 重厚な本ですが、示唆に富んだ良書だと思います。これからの長寿社会という人類がまだ経験したことのない新たな地平に立ち向かっていく上での勇気を持たせてくれる挑戦的かつ実験的な本だと感じました。
 既に私たちの身の回りでも80歳を超えて元気な方が大勢おられます。
 これからはさらに平均寿命が延びるだろうとの予測のもとに、何歳まで働くべきか、金融資産はいかにすべきか、働く者と企業の関係はどうなっていくか、企業はその変化にどう対応していくべきかなど様々な観点から考察が加えられています。
 著者は「教育⇒仕事⇒引退」という従来の一直線かつ一斉行進型のモデルである「3ステージの人生」から、仕事をいくつか変わる人もあるし、途中でしばらく仕事を離れて自分に再教育して改めて登場する人もあるため、エイジ(年齢)とステージ(立場や役割)が分離する「マルチステージの人生」へと変化していくだろうとみています。
 しかしこの変化は急激ではなく「ゆっくり進む」とも言っています。

 このような変化を踏まえ、私たちに必要な資産が4種類あるということです。
1.生産性資産:評判、職業上の人脈、知識
2.活力資産:自己再生の友人関係、健康、人生のバランス
3.変身資産:自己理解、新しい人的ネットワーク、行動力
4.有形資産:マイホームや貯蓄

 この中で「自己再生の友人関係」はとても大事なものだと私も思いますが、子どもの頃から築かれてきた親友関係は、会社の中で仕事をしていくにつれ関係が希薄になっていき、定年退職する頃には友だちが全然いない(仕事関係の“友人”はいても仕事から離れると関係なくなってしまう)という場合もあるようです。
 今はSNSをうまく使えば、昔からの友人とも気軽に連絡を取り合ったり消息をお互いに確認しあったりすることができるようになりました。
 しかし密度の濃い間柄を維持することは容易ではありません。しかし時々そのコミュニティの中に戻って自己再生をすることはとても大事なことだとこの本を読んで改めて感じました。

 仕事をする集団である企業においても様々な課題があると著者は言っています。
 以下は「企業が今後直面し対応を求められる課題」の例です。
1.無形資産形成の後押し(生産性資産、活力資産、変身資産)
2.変身資産構築・維持の支援
3.キャリア制度・仕組みの見直し
4.仕事と家庭の関係の変化への理解(家庭それぞれ家族の役割が異なるし、子どもなどの構成状況によっても一律ではないことへの理解とその事情に応じた対応)
5.年齢を基準にしない(70歳、80歳の人の方が40歳、50歳の人よりも高スキルというケースもあるといったようなこと)
6.実験的な働き方・評価の仕方の容認(人類が経験したことのない取り組みをすることに対する寛容性)

 前著『ワーク・シフト』から寿命が延びていく社会における生き方・立ち向かい方に特に焦点を当てて書かれた著書というふうに私は捉えました。
 『ワーク・シフト』にも想像しうる世の中の変化と、その変化にどう立ち向かっていくべきかなどについての知恵が色々書かれているようなので、この勢いで読んでみようかと思っています。

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2期にわたる大学での講義を終えて

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 先日も書きましたが、ご縁で富山国際大学という大学で「情報社会論」という科目を受け持たせていただきました。

 平成27年度の後期と28年度の後期の2期、非常勤講師という立場での対応でした。
 受講者は各年度約50名ずつ。
 それぞれ15回の授業と期末試験の全16工程。
 初年度は依頼をいただいてから開始まであまり時間がなく、前任の方の授業構成(シラバスっていうんだそうです)をなぞって取り組み、2回目の今回は前回のものを利活用しつつ最新の動向なども含め、構成を全体的に見直しました。

 全15回のカリキュラムは次のとおりです。

 第1回 オリエンテーション、情報社会論序論
 第2回 人類の歴史と情報革命、コンピュータの登場
 第3回 「情報システム」という考え方 ~OAからSISへ:企業情報システム、国家レベルの情報システム、EUCとパソコン~
 第4回 情報と通信の融合的発展:ニューメディアからインターネットへ ~通信プロトコル、標準化、TCP/IP~
 第5回 経済社会とIT その1 ~私たちの生活に直結しているIT、POS、カード、家庭や労働とIT~
 第6回 経済社会とIT その2 ~IoT、ビッグデータ、知識労働者~
 第7回 ネットワーク社会の光と影 その1 ユビキタスコンピューティング社会、Web2.0からWeb4.0へ~
 第8回 ネットワーク社会の光と影 その2 ~監視社会、情報犯罪、情報セキュリティ~
 第9回 メディアの変容、口コミとデマと流言飛語 ~瓦版からTwitterまで~
 第10回 情報社会の倫理と情報リテラシー
 第11回 情報社会を支える法、国の情報戦略、情報公開と情報保護
 第12回 IT産業の発展と今日のIT業界における覇権争い ~Google、Apple、Amazon、Facebook、他~
 第13回 諸外国のIT化動向
 第14回 これからの情報社会を考えるためのキーテクノロジーズ ~電子商取引、電子マネー、クラウド、AIとロボット、そして人間はどこへ?~
 第15回 まとめとふりかえり

 作成したパワポの枚数は千枚以上。配布した分だけだと約600枚になります。
 もしも次年度もあれば、これにまた最新情報を加えたり深堀すべきものを付加したり古いものを廃棄したりという更新をかけて臨むつもりでした。
 が、次年度この授業は、本来の姿である大学の専任教員の方が対応されることになったので、私の役割は終了しました。

 お話をいただいた時に相談した師(元・同大学の教授)から、「人に教えるテーマとは、実は自分が学ばなければならないことなのだよ」と言われ、豁然と理解させられた覚えがあります。
 確かに、この2期間学生の皆さんに伝えるために、自分の中で一つの科目についての体系・骨格が形作られたような気がします。
 もちろんこの分野はドッグイヤー、ラットイヤーなどと言われるように日々激しく変化し、主流になっていくもの・いつの間にか消えていくものなど目を見開いて世の中の動向を見ていなければならず、情報が体系化されたとしてもその瞬間から陳腐化していきますので、じきに使い物にはならなくなるネタも沢山あると思います。
 ではありますが、昭和59年に電電公社に就職してから歩んできた自分の情報通信業界での社会人生活を振り返りつつ、最先端の情報社会の動向などを学んで90分一コマの授業を15回分に整理できたことは大変有意義な時間だったし、色々なことが体系的に整理できて、とても勉強になったことは間違いありません。
 またNTTの研修センタで社内研修の講師をさせていただいた経験も、この大学の授業を行う上で大いに生かすことができました。
 どこで何がどうつながるか、ほんとにわからないもので、私を育んでくれた会社、先輩・同僚・上司、この話を私に紹介して下さった中小企業診断士の大先輩、私でいいよと仰って下さった大学の教授の方々、などなど多くの人に感謝感謝です。
 授業の日は大体晴れの日が多かったですが、最終日だけは雪が積もりました。
 いい経験をさせていただき、本当にありがとうございました。

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情報社会論の奥にあるのは寛容論かも知れない

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ご縁があって富山国際大学というところで「情報社会論」という授業を受け持たせていただいています。
情報社会という切り口で世の中の色々な事柄について論じあっています。
全15回、IT、通信、メディア、法律、科学技術など色んなテーマで学んでいますが、よくよく考えると、私が一番伝えようとしていることは「寛容論」のようなものなのではなかろうかと最近思い始めています。
世の中には色々な立場の色々な境遇の人が共存してこの社会を成り立たせています。
しかし私たちはややもするとスマホの画面をちょっとなぞるだけで、誰かの悪口を世界中に発信したり、猛獣が動物園から逃げ出したなどの根拠のない話を撒き散らしたり、正面切っては言えないことをつぶやいたりすることができます。
それは発言力の弱い私たちが発言できるツールであり、誰でも著者になれるチャンスを開くものであるなど良い点もあるのですが、言葉の暴力を容易に表出しそれが拡散されてしまう危険性もあります。そうしたやり方になじんでいくと、自分と違う価値観の人との間に線を引いたり壁を作ったりすることへの心理的な抵抗感がだんだん小さくなってしまうのではないかと感じています。
ITの功罪ということを考えると、ITには(ITだけではありませんが)そういう負の側面(又は負の可能性)があることを意識して、過激な方向に行かないよう自制していくことが大事なのではないだろうか、それがITリテラシーというものではなかろうかと思います。
自分と違う価値観、多様な意見があることをまずは認めあい、その上で議論をし、共通点や妥協点を探ることが大事ではなかろうかという思いをベースに毎回の授業をしています。そのため、短時間ではありますが、グループディスカッションを毎回行い、何かの事象についての色々な受け止め方がありうることを一緒に学んでいます。
あと来週の授業で今期も終わりですが、学生さんたちが何か一つでもつかみ取ってくれたらいいなあと思っています。

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「プロジェクトの成功」と「人と組織の成長」を同時に実現する

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 数年前に偶然書店で手に取った『アナログコミュニケーション経営』という本があります。一読して大変感動しました。今の日本企業に失われている、人と人、上司と部下、チーム内の人々が互いに共通の目的に向かって相談しあいながら現在と未来の問題を解決していく仕事の仕方が必要だということが、とても平明な文章と実例で語られていました。

 著者は倉益幸弘という方で株式会社インパクト・コンサルティングの代表を務めておられる現役のコンサルタントです。
 昨春この著者に連絡をとって、実際に企業指導をする現場で研修を受けさせていただきました。
 その時のご縁で、今年の12月に事例発表会にお招きいただきました。おかげで1年ぶりに東京に出張する機会を得ました。一気に事例本も2冊同時上梓です。大変エネルギッシュな取組事例の紹介があり、久しぶりにインパクト・コンサルティング社とそのノウハウを採り入れられた企業の情熱に触れることができ、自分自身改めて何をなすべきかの決意を新たにしたところです。
 正しい価値観やそれに基づく信念の行動、そして職場の仲間と協力していくということがいかに大事か。個人の成果ばかり問うやり方の間違い、メール中心の連絡手段の誤り(メールでコミュニケーションを取っていると思ったら大間違い)、段取りに対する配慮のない職場の落とし穴・・・そういう誤った仕事の仕方から早く脱却することが大事だと思います。

さて折角東京に行きましたので、一泊して有名な代官山の蔦屋書店を訪れました。書店、レンタル店(セルフでの貸し出しもできる)、レコード試聴コーナー、雑誌「太陽」など昭和の雑誌が多数取り揃えてある喫茶(夜はバーになる)など、広い敷地にまさに文化の発信拠点と言えるような一角でした。店員さんに「こういう所で働けるってとっても誇らしいですね」というキザな言葉が思わず口を突いて出てしまいました。
帰路新幹線から左の方角を眺めていたら、富士山の雄姿を拝むことができました。
来年も明るく心豊かな年になりますように。

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富山県よろず支援拠点での相談対応もろもろ

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 週に2回程度は「富山県よろず支援拠点」での相談対応をさせていただいています。
 商工会や金融機関からの紹介でお越しになったという方が多いです。
 金融機関の方が同席されるケースも結構あります。
 知り合いから聞いて来た、と仰る方も増えてきました。
 まだまだ大多数の中小企業者の方々はご存知ないだろうなあと思うものの、多少認知度が上がってきたのだろうと思います。

 単発のご相談も結構ありますが、最近は何かの目標を持って、そこに向かって一歩一歩進んでいく際に、「よろず」への相談&報告を自分自身のメルクマール(中間到達目標)としてお越しになる方が増えてきているように思います。
 次回までの課題を一緒に考えて、それをクリアすることで目標に向かって進んでいるという実感を得ていただいているのかも知れません。
 立派だなあと本心から思います。
 人はややもすると安きに流れる傾向があります。私などその典型で、予定が詰まっていないと朝はなかなか床から離れられません。
 この方々は安きに流れないよう自分を律し、次の相談日を設定することで自分を鼓舞しておられるように思います。
 そして自らに課した課題をしっかりこなしてお越しになるのです。もちろん相手のあることで思い通りにならないこともありますが、しっかりアクションを起こしておられます。
 こういう方々は、恐らく私どもがいなくてもちゃんと道程をこなしていかれるのでしょうけど、歩みのそばにつかず離れずの状態でいることで少しでも励みになるのであれば、これに勝る喜びはないと最近は感じています。

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