正しくは『依頼の絶えないコンサル・士業の 仕事につながる人脈術』という書名である。
東川仁さんという士業で独立をする人たちのためのコンサルをすることを生業とされている方の著作だ。
たまたま「企業診断」という雑誌でセルフブランディングというテーマの特集を読んだ勢いで、会社勤め=組織人といえども自己のブランディングは大切だと思いながら、その勢いで、先日購入したこの本を読んだ。
自分を売る、ということは、およそ客商売をする仕事である以上、欠かせないものである。
もちろん、組織に属している以上は、その組織の価値観を共有し、それをお客様や仕入先に対しても伝えている使命があるし、それに共感していただいた人や組織と一緒に仕事をしていくべきものである。
ではあるが、組織の一員としながらも、お客様は単にコーポレイトブランドだけを買うわけではない。
店頭売りの商品ならいざ知らず、金融サービスや耐久消費財、生産財などは、対面販売であり、セールス担当者から買うことが多い。つまり、「人」が購買を決定する要素の一つであるこおてゃ間違いない。
といったような文脈を踏まえ、この本は、とても具体的で実践的で刺激に満ちた内容満載であった。
例をいくつか。
・オリジナルのポストカードを作る。
・事務所便り=自分ニュースを作る。
・きどにたてかけし衣食住(これは世間話の常套手段)
・自分のほめられた経験=それが自分の強みであり、それらをしっかり意識することが大切
・ナナメ人脈の活用、ナナメ人脈とは、業種も年齢も違う層の人々である
・人脈つくりとは、畢竟、周りの人を大切にすることである
などなど、ためになることが大変多い本であった。
「読んだ本」カテゴリーアーカイブ
モレスキン 「伝説のノート」活用術~記録・発想・個性を刺激する75の使い方
ずっとシステム手帳を使ってきた。
学生時代から就職してしばらくは「能率手帳」だった。
が、普通に忙しくなってからはシステム手帳の愛用者となった。
途中、野口悠紀雄さんの「超」整理手帳を手に取ったり、A5ノートの利便性にはまったりしてきたが、手帳本来の携帯性と柔軟性の両方を兼ね備えたシステム手帳(リフィルの入替で、たとえば1ページに1日分しか書けないスケジューラを使うこともできれば、それほど分刻みのスケジュールでなければ1週間分が1ページに入ったスケジューラでもいい、という柔軟性がある)に最後は軍配が上がった。
しかし2年ほど前から気になっていたのが、この「モレスキンノート」である。
まず本を買った。
この本も、出版されて間もなく、書店で立ち読みをし、その後もずっと気になっていた本だ。
気になる気になるがどんどん昂じて、やっぱりあの本を買わなきゃ、と思い、先週購入。
内容は、モレスキンに限らず、およそ手帳の使い方として考えられる色々な活用方法が書いてある。
手帳好きにとっては大変面白い活用方法満載の本である。
で、先週末、遂に文具店に行き、モレスキンノート(という名の手帳)を買い求めた次第。
最初に買ったのは方眼状のタイプである。
これに「ローディア」のメモを貼ったり、普通に書き込みをしたりしている。
最近の朝の日課は、日経新聞に載っている気になる単語をさらりと書き付けるという営みである。
立ったままでメモ帳に書き込みができるのがこのモレスキンノートの大きな強みだ。
しかしスケジュール管理については、従来のシステム手帳を相変わらず持っている。
私は元来仕事もプライベートも一つのスケジューラ・一つの手帳で管理してきた。
となると、現在のシステム手帳+モレスキンノートというのはやりにくくてしょうがない。
というわけで、最近発売になったらしいモレスキンの18ヶ月ダイアリータイプのものを注文した。
さて、今回のモレスキントライアルは、これまで時折やっていた「浮気」に終わるか、それとも本格的にシステム手帳からの卒業となるか、1年半後が楽しみである。
決算書分析の入門書『 「俯瞰」でわかる決算書』
著者は中村亨という方で、どうやら富山県出身らしい。
私より随分若いのだが、とてもわかりやすい本である。
職場の先輩から、決算書の分析、資料作りはこんなふうにやって欲しい、ついては是非一読を、とのお薦めを受けてアマゾンで購入して読んだ。
とても読みやすく、わかりやすい本だ。
詳細な分析を好む人にとってはかなり物足りないかも知れないが、細かなところばかり見すぎて、「森」が見えなくなってきたあたりの私にとっては新鮮で良かった。
物事はまずは大掴みから入る、という原則が大切である。
PL(損益計算書)は、粗莉、営業利益、経常利益、これらを経年比較、同業種他社比較をして、特徴を掴み、そこから気になる大きな数字を深堀する。
情報技術の世界でいう「ドリルダウン」である。
BS(貸借対照表)は純資産、固定負債、流動負債と流動資産、固定資産をブロック(固まり)としてイメージし、返済がしやすい資産状況かどうかを判断する。
但し、資産の中には不良資産が混じっていることがあるので、棚卸資産の信憑性、貸付金の回収可能性や投資資産の本当の資産価値など、大きな数字などはしっかり中身を把握して実態を掴む必要がある。
CF(キャッシュフロー)は、営業CF、投資CF、財務CFの順に見ていく。
営業:+、投資:-、財務:-、という感じがいいのだが、企業の成長段階で必ずしもそうでなければならないということはなく、対象企業が、いわゆるライフサイクル上のどこに位置するかを考えながら、CFを見る、という視点が大切。
そんな基本を再認識させてくれる良書であった。
『インシテミル』を読み、映画も観た
速読の一環で、たまに小説もいいかなと思い、先日米澤穂信さんの『インシテミル』という小説を読んだ。
次男が映画を観たという話を聞いていたので(次男は藤原竜也さんのファンだったと思う)、共通の話題ができるかな?という思いもあった。
小説は、内容は書かないが、ぐいぐい引きつけるような迫力があり、早い速度で読んだけれど、なかなかスリリングで面白いものだった。
読んだ数日後に、以前録画しておいた映画の「インシテミル」を観た。
昔の角川ではないが、読んでから観るか、観てから読むか、である。
小説は飛ばし読みをした関係で、少し理解が不十分な点もあったが、映画を観てすっとわかった。
しかし、映画は2時間程度にストーリーを映像を交えて詰めなければならないせいか、小説の方が面白かったと思う。
よくあることで、小説のエンドと映画のそれも違っていたし、ストーリー展開も少し変えてあった。それは特に違和感はなかった。
映画の俳優はいずれも今の日本の主役級の人々で、豪華なキャスティングであった。
(藤原竜也さん、北大路欣也さん、綾瀬はるかさん、石原さとみさん、平山あやさん、石井正則さん、武田真治さん、片平なぎささんらである。)
米澤穂信さんの本はまた読んでみようかと思う。
小説、映画、どちらもお勧めである。
三上延さんの『ビブリア古書店の事件手帖2』
1冊目に続いて、2冊目も大変面白かった。
明るくリラックスできる推理小説だ。
疲れた時の癒し本、って言ったら著者に失礼だろうか。
主人公と店主の関係が少しずつ狭まってきているのだが、できればこのままプラトニックな関係が続けばいいなあと思っている。
3冊目、4冊目も楽しみにしている。
医学者・中田力氏の『日本古代史を科学する』
中田力という方(医学者・・・相当権威のある方らしい)の『日本古代史を科学する』という本を読んだ。
この方が医学者であるということと、本の内容は直接の因果関係はない。
しかし、これまでの歴史学者とはまったく異なるアプローチで、邪馬台国や出雲王朝の成り立ちを解き明かそうという試みであり、大変興味深く、面白く読ませていただいた。
日本古代史好きにとっては、たまらなくロマンを掻き立てるテーマである。
といってもこの著者のアプローチはロマンで行われているわけではない。
ま、能書きはともかく、魏志倭人伝にある「方三百里」とか「陸行何日」とかいうのを、たとえば、一理を何キロという今風の距離感ではなく、当時の色々な資料に当って、せいぜい60~70メートルだ、という比定をして、そこから、最終的には、邪馬台国は宮崎県の日向灘辺りだ、と推論づける。
また、染色体科学や中国の王朝の興亡をひもとき、「奴」国も、邪馬台国も、出雲も、いずれも中国南部の「呉」や「越」の戦争難民が逃れてきたという推論を行っている。この中で検討されているヒトの染色体、それと、米の染色体を連動させて、理論づけている考え方がとても面白く、推理小説を読み進むようなワクワク感がある。
ずっと「科学的」と言い続けておられるのだが、最後の方は、「検証が難しい」と言って、多分に思いで書いておられるようなところも多いが、それは日本古代史の霧の中のことを考えるためおのずと限界があろうと思う。
それでも十分頷けるところの多い、新たな日本古代史論であると思う。
清水克衛さんの『非常識な読書のすすめ』
podcastに「新刊ラジオ」という番組がある。
そこで紹介されていた。(この番組を聴いて買う本が最近は多くなってきた。)
清水克衛さんという私と同年代の書店主が書いた『非常識な読書のすすめ』
内容は、決して非常識ではなく、むしろ常識の王道かも知れない、と思うことが書かれている。
読書がいかに我々の生きる道しるべや参考として大切なものか、ということを、彼が読んだ様々な本の紹介を交えながら語っている。
むしろこれから人生航路を進んでゆく若い人たちに向けられたメッセージのように思える。
<自分を大切に><読書をして磨きをかけろ><ブレるな>など強いメッセージが全編を貫いている。
読書法の本かな、と思って買ったが、そうではなく、著者が読んで面白いな・いいな、と思った本の紹介といった感じで綴られている。
しかも上述のように、単に書評や本の紹介ではなく、読書の有意義さについても語られていている。
ああ、こういう本の書き方もあるんだなあと感心した。
誰かに勧めたい一冊である。
ようやく読みましたM.J.アドラー氏の『本を読む本』
読んだらすぐにここへ読後感想などを書けばいいのだが、仕事に追われる日々が続いていると、ついつい後回しになり、机の上に「積ん読」ならぬ、ただの「積んどく」になってしまう。
この本は宮部みゆきさんの『クロスファイア』を読んだ直後に読了したものであるので、やはり読後2ヶ月くらい経過してしまっている。
きっかけは、勝間和代さんの『効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法』を読んだことである。
この中で素晴らしい本だと紹介されていたので、いつかしっかり原本を読んでおかなければと思い、すぐに購入したのだが、ちょっと気持ちが守備的になり、読まず仕舞でここまで来た。あれからもう何年経つだろう?
ということで本のエッセンスを少し紹介しよう。
1.読書には4つのレベルがある。
第一のレベルは「初級読書」
言ってみれば、普通に文字を習い、読み方を覚え、一字一句詠んでいくというもの。
2.第二のレベルは「点検読書」
表題や序文を見る。
目次を調べて、本の構造を知る。
その他、索引やカバーのうたい文句を見る。
その本の要の部分を想定して、いくつかの章をよく見る。
ところどころ拾い読みする。
ここまでが「点検読書」の前半であり、数分からせいぜい一時間程度で行う。これで大体のことが把握できるという。
後半は、指を本に添えて文字の上を動かし、その速度に従って目で追うというものである。
これは、恐らく慣れていないとやりにくいが、理解できる部分だけを表面的に読むというやり方である。
抵抗感があるかも知れないが、難しいことを理解することが目的でなければ、表面読みで構わない、というようなことを著者は言っている。
3.いずれにしろ、本は受動的な読書のレベルで留まらず、積極的な段階へ移すように、と著者は主張する。
これが第二レベル以上の読書に必要な条件だという。
そのための基本的な4つの質問。
質問、とは読者が本(著者)に対して行うものである。
従って、誰も音声では答えてはくれない。本から引っ張り出すのである。
そのことを前提に。
①全体として何に関する本か。
②何がどのように詳しく述べられているか。
③その本は全体として真実か、あるいはどの部分が真実か。
④それにはどんな意義があるのか。
これらは、どんな本を読む場合でも、読者がしなくてはならない共通の質問だという。
これを行わないと、問題の核心を突いたことにはならない。
第二レベル以上の読書の技術は、正しい質問を正しい順序でする習慣をつけることだ。
4.以降のレベルの詳述は行わないが、ちなみに、第三レベルは「分析読書」
本を批判的に読むこと。
高校ぐらいでよく国語の教師から言われたことは、「批判的に本を読みなさい」というものだった。
それがこの年になってようやくわかってきた。ちと遅い。
さらに第四レベルは「シントピカル読書」というらしい。
これは複数の本を同時並行的に読み、色んな考え方・違い・共通点などを、質問を携えながら、自分の論点をまとめ上げていく読み方だという。
テレビの「キイナ」がやっていたのはまさしくこういう読み方だと思う。(かなり魔法的な速読までやっていたが)
ということで、本を読むための技術が、きちんと整理された良書だと思う。
色々読書技術に関する本を読んでいるが、いずれも「質問しなさい」ということがきっちりと書かれているのはどの本にも共通したことだ。
自分が判断の主体であり、その判断のために、主体的に必要な情報を収集し、活用しなさいよということだと思う。あとはテクニックだ。さあ、また読んで人生をより豊かなものにしていこう。
宮部みゆきさんの『クロスファイア』
なかなか書く暇がなく、読了後2ヶ月以上経ってしまった。
宮部みゆきさんの本は、どちらかと言うと妻が愛読しているのを、私が妻が読んだ数年後に後追いさせてもらっている。
エスパーものである。
女性エスパーと言えば、筒井康隆さんの「火田七瀬」ものか、半村良さんの「魔女伝説」が面白かった。
筒井さんの火田七瀬は、人の心を読む(聞こえてくる)力を持っていて、はじめはそれを制御するのに苦労していた。
事務員などの職業に就くのが危険だと思い、お手伝いさんを転々とするという職業を選んだ。
純情可憐な乙女で登場する。
途中で能力者を探す組織に狙われて、二作目の最後に命を落としてしまう。
最終的には神と一体化だったか、神と結婚だったか、そういうような終わり方まで昇華してしまう、三部作だったと思う。
一方こちらは、清らかな火田七瀬とは違い、悪いやつをやっつける、という使命感に燃えた、でも人をあやめることには変わりはない、少しダーティなヒロインである。
七瀬よりも年齢も少し上だ。
いずれにしろ、世間をはばかる生活をしている点は同じかも知れない。
終わり方がつらい点は、能力者の共通した宿命なのかも知れないが、主人公の青木淳子が次の世代に何かを残しているのかも知れないなと感じられる最後のシーンは救いがあると考えたい。
そういえば、半村良さんの『岬一郎の反抗』というエスパーものも似たような趣の小説ではなかったか。
いずれ読んでおきたい。
三上延さんの『ビブリア古書店の事件手帖』
去年の大晦日、書店に行ったら、文庫のコーナーが気になって、ついつい最近の若者が読んでそうな感じの本を数冊まとめ買いした。
今、並行してそれらを読んでいる。
真っ先に終わったのがこの本だ。
私も本が好きなので、古書店というネーミングだけで惹かれてしまうところがある。
学生時代、神田神保町にはよく出かけたものだ。
さて、この本は、神田神保町ではなく、鎌倉にある三代続く小さな古書店を舞台にしたものだ。
しかも店主は病院に入院しながら色々な事件を解決していくというもの。
世に「安楽椅子探偵もの」というジャンルがあったような気がするが、これもその系譜かも知れない。
主人公は自分のことを「俺」と表現する23歳の読書まったくしない男性であるが、気持ちが実にいい若者だ。
この若者の視線を通し、古書店主(女性)が〝探偵〟の役回りを務める。
とても内気で社会との関係がうまく結べないような女性だが、本のことになると、それも古書のことになると俄然人格が変わったように元気になる。
彼女退院したら、一度この古書店を訪ね、お目にかかってゆっくりお話を伺いたいものだと思う。
一冊の文庫本に見事に起承転結が入っている。
小気味良いストーリー作りだなあと思う。
本の雑誌2011年文庫ベスト1らしく、私が購入したのは発売9ヶ月で既に第15版である。
Part2も出ているようなので、是非読んでみようと思う。