チャック・マンジョーネというミュージシャンがいる。
Feel so goodという曲で一世を風靡したトランペッターである。
オリンピックのテーマソングなどにも使われたのではなかったか。
万城目 学
という名前を見たときに、まず思ったのは、そのチャック・マンジョーネの名前であった。
マンジョーメ マナブ
だと思ったからである。
本の奥付を見て
マンジョーメ
ではないことがわかった。
マキメとお読みするらしい。
大変失礼した。
前から気になっていた。
それもタイトルが『鴨川』だとか『あをによし』だとか、京都・奈良に関係ありそうなものが多く、いやがうえにも私の関心を強く惹きつけて来た。
ハードカバーではちょっと手が出にくかったが、先週書店に行ったら文庫本が出ていたので、思わず買ってしまった。
週末の二日間で400ページのうちの250ページほどを読んだ。
はじめちょろちょろだったが、なんだかとても面白そうなので、一気にペラペラとページをめくるスピードが速くなった。
とにかく面白い。
奇想天外という点では筒井康隆に似ている?と思ったが、だいぶん違う。
神の使いである鹿がしゃべり、鹿島大明神とつながり、つまり藤原氏の流れが根底に流れていたり、関東と関西にわたって地下に大なまずがいるという話があったり、そいつが暴れるために富士山まで噴火するという話があったり、それを鎮めるために卑弥呼がおまじないをかけていたり、などなど、現代から瞬時に超古代に想像がふくらんだり・・・奈良ならではのストーリー展開である。
こんな面白い小説を書く人がいるんだなあと感心した。
それ以上に、私にとっては、奈良の中心部が全編を通じて織り込まれており、景色を思い浮かべながら読めたのが何より楽しかった。
東大寺の各所、大仏殿、猿沢池、平城旧跡などなど。
加えて、奈良に留まらず、京都・岡崎の京都動物園まで出してくれたのは、この人のサービス精神と言おうか。
堀田イトという女学生の存在感。
これがまた凄い。
ボーイッシュだが可憐さもあり、初々しく、しかも強い。
少女らしい悩み方も愛らしく、思春期の乙女がきっちり描きこまれていると思った。
読んでから知ったのだが、2年前にフジテレビでテレビ化までされているとのこと。
主人公が玉木宏さんで、件の堀田イトの役を多部未華子さん。
ピッタリだと思う。
誰がこんな配役を思いついたのかわからないが、うってつけの配役である。
機会があればDVDも見てみよう。
「読んだ本」カテゴリーアーカイブ
エックハルト・トール氏の『超シンプルなさとり方』
ドイツ人のエックハルト・トール氏。
見た目はやや優男だが、決してナンパ師ではなく、ちょっと不思議な人物だ。
(って言うか、顔見たことあったっけ?)
この人物のことを聞いたのは、曹洞宗真国寺ご住職のN師からである。
まだそれほど知られてはいないが、これから出てくる人だよ。
と教えられた。
調べてみると、「the Power of NOW」などという講演の音声などを聞くことができる。
<今に生きる>という主張だ。
<今に生きる>とは、過去を引きずって今の自分を左右されてもしょうがないだろう、未来に期待しても今ちゃんとやんなきゃ何にもならないだろう、というような生き方のようだ。
ちょっと私ごときが書くと、なんだか安直になってしまってこの人の本当の趣旨をうまく伝えられないが、要は自分の本質は、過去や未来という、現実には存在していないものに引きずられて、本当の自分を見失わないように、とか、実は本当の自分は過去や未来ではなく、今この瞬間にしか存在していない、とか、この瞬間は永遠にこの瞬間であり続ける、とか、この瞬間というのは自分の呼吸している今を見つめるとわかってくる、とか、自分の本質は大いなる永遠なる存在と根底でつながっている(潜在意識が宇宙意識とつながっている)、それは神と呼ばれたり仏と呼ばれたり宇宙と呼ばれたりする存在だ、とか、そんなようなことだ。
ここで大事なことは「呼吸」というキーワードである。
また出てきた。
先日読んだ別の本にも「呼吸」をゆっくりするといいということが書いてあった。
吐く息を45秒ぐらいかけてできるようになると、山岡鉄舟のように何物にも動じることがなくなる、というようなことも。
漢の張良なども、劉邦が国家を統一した後は、功臣ねたまれて斬殺、というようなことを避け、隠遁して呼吸の研究を(今で言う太極拳のようなことを)していたようであるし・・・。
呼吸は大切だ。自分を見つめるというのは、自分の呼吸と一体化するというようなことなのかも知れない。
というようなことを感じつつ、それ以外にも色々なことが書いてある本だ。
後半は少し難解だった。
五次元文庫っていうことなので、余計引いてしまうかも知れないが。
いい本はいい。
墨子
まだまだ途中もいいところだが、墨子を読んでいる。
ずっと以前に、酒見 賢一さんの『墨攻』という小説を読んだが、大変わくわくする素晴らしい小説だった。
それ以来、墨子が気になってしょうがない。
公輸盤という人物がいる。
この人が、ある国で「雲梯」という、はしご車のような攻城用の武器を開発した。
それで攻められると面倒なので、墨子がその人を説得に出かけた。
墨子は論を尽くして「お前は間違っている」ということをわからせた。
ところが、その上司(国王)がうんと言わない。
それでも墨子は説得し尽くして、理ではわからせるところまで話を詰めた。
にもかかわらず、国王は、攻めると言う。
墨子は仕方なく、机上で「雲梯」で攻められた場合の対応策を見せてみた。
何度も攻めるが、墨子の対応策にかなわない。
公輸盤は墨子を殺せば対応策ができないだろうと想定する。
墨子は、それがわかっていて、最後の手段は俺をこの場で殺すことだろう、と言う。
そうすれば、「雲梯」への対抗は水の泡となるだろう。
しかし墨子はさらにその上を行っている。
ここで墨子を殺しても、部下に対抗策をすべて伝授してあるので、何の意味もなさないことを伝える。
遂に公輸盤と国王はその国を攻めることを断念し、墨子も解放される。
これが、非攻、というものであるようだ。
紀元前400年の世界に、こういうすごいことが行われていた、ということが驚きだ。
いかなる知恵か。
もっと墨子のことを学ばねばと思う。
残念ながら、秦が中国を統一して以降は、この人たちの活躍する場がなくなってしまったようではあるが、なんとなく、五斗米道など道教的な集団には伝播していったのではないか・・・。
そう考えるとロマンが生まれる。
村上春樹『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』
長いことかかった。
たぶん、上下2冊を読み終わるのに4年ぐらいかかったのではないか。
原因はひとえに私の遅読でしかない。
夜寝る時に、時々開いては1ページか2ページ、多いときには1節ぐらいか。
そんなことで、ようやく、この本を読み終えた。
意外な結末だった。
「世界の終わり」の主人公と「ハードボイルド・ワンダーランド」の主人公は、たぶん、前者が眠りにつき、その夢の中の世界での出来事が後者なのだろうと思うが、いずれにしても、相当な物語である。
最後に夢の中から現実の世界に戻ろうという刹那、影だけが戻って、本人は結局夢の中に残ってしまう。
同じ一人の人間の、本体と影が別々に生き別れてしまうというのは、いったいどういうことだろうか。
物語だからいいのかな?とか色々思うが、ともかく、妙な終わり方の物語である。
しかもこれだけのページ数がありながら、登場人物がとても少ない。
実質、ほとんど4人か5人がメインで、あとの人物にしても数人しかおらず、それらの人の登場シーンはほどんどない。
深い感動・・・ではない。
でも何かが残る物語だった。
まあ、面白かった。(しかし4年かけて読むものではない。村上春樹さん、すみません)
ロッキー・リャン氏の『成功の真実』
昨日、書店の中を歩いていたら、ロッキー・リャンという人の書いた『成功の真実』という派手な装丁の本が偶然目に止まり、私にしては珍しく中身も見ないですぐ購入した。
ロッキー・リャンという人物が何者かも知らずに、である。
家に帰ってパラパラめくってみた。
深夜、テレビの「ターミネーター サラ・コナー・クロニクルズ」を見た。
いつもなら12時に終わるのだが、今回は12時35分に終わった。時間の変更があったようだ。
普段の私は寝る前は、本を傍らに置きつつも、12時を過ぎていれば結局1ページも読まずに寝てしまう。
それが昨日はなぜかこの本が気になって、サラ・コナーが終わってからいきなり読み始め、結局2時過ぎまでかかって全部読んでしまった。
大変刺激に満ち溢れた本だった。
面白かった。
著者は台湾の人で、青年時に父から疎まれ(悪魔、とまでののしられ)、うつになり、9年かかっても高校を卒業しておらず、自殺直前まで行き・・・という地獄のような青年時代を過ごしたのだが、その後「夢」「目標」を持ち、明確に期限を設定し、仲間を集め、自らもセールスに奮闘し、結局それから十数年で億万長者になり、今なお成功を重ね続け、自分だけでなく仲間や生徒にも自分のやり方を公開し成功者を輩出させようとしている人である。
また中国の発展を強く望んでおり、中国の経済発展を成し遂げることが夢だと頑張っている人でもある。
これまで成功本という類のものをいくつか読んできた。
古くは謝世輝氏の『願望はゼッタイかなえられる』に始まり、『マーフィー100の成功法則』『巨富を築く13の条件』『ザ・レター』など。最近は読書に加速度がつき『成功本50冊勝ち抜け案内』『成功本51冊もっと勝ち抜け案内』『非常識な成功法則』『思考は現実化する』『ザ・シークレット』『引き寄せの法則』など、その筋の本命と言われる本を片っ端から買い込んで読み漁っている。
自分は何がしたいのか。
ということがはっきりしていないと、こんな本いくら読んでも意味はない。
自分にしたいことはもちろん色々ある。
毎日のようにノートに夢を書き込んではそれが実現した情景を思い浮かべて眠りに就く。
まあそれはいい。
ともかく、そういう行為がいい、ということを、この著者も言っている。
いやむしろ、この本は、これまで出た色々な成功本を集大成したような内容である。
引き寄せの法則あり、ザ・シークレットからの抜粋あり、非常識な成功法則で神田昌典氏が言っていることと同じことも言っており、しかも全て自分自身の体験談なのだから迫力がある。
今まで成功本と言われる類のものをご覧になったことのない方は、是非これを読んでみられたらいいとおもう。
高田明和氏の『心がスーッとするブッダの呼吸法』
呼吸法については、以前から関心があっていくつか類書を読んでいる。
高田明和氏の『心がスーッとするブッダの呼吸法』はわりと読みやすい本だった。
正しい呼吸法を行えば、ストレスは消え、病はなくなり、落ち着きが増し、長生きができる。
80歳まで健康に生きていき、最後にぽっくり死ぬことを理想としている私にとって良い呼吸法を習得することが重要な目標の一つだ。
本に書いてあった重要な点をかいつまんで記録しておく。(初読者への解説ではありません。あくまで自分の備忘録として)
・足心呼吸:足の裏から空気を吸い込んで(吸い込むような気持ちになって)、へそまで入れる。へそから徐々に吐いていき、足の裏から吐き出す(気持ちで)。
・つぶやき:困ったことは起こらない、全ては良くなる、いやな過去は思い出さない。
・中渚(ちゅうしょ)というツボ:手の小指と薬指の間の1センチほど下のへこみを軽く押す(反対の中指の腹で押す)。
・無の呼吸:ムーーーーーーーーッと唱えながら吐き、吸う。数息観、禅の工夫に通ずる。
『100年予測』byジョージ・フリードマン
フォト・リーディングでジョージ・フリードマンの『100年予測』を読んだ。
ここ2~3週間ほど、ベストセラーが続いている本だ。
欧米では今年の早い時期に既に大ヒットしていたようだ。
未来予測ものであろう、と勝手に解釈して買い、表紙を見るとそうではないことがわかるにも関わらず、相変わらず読む直前まで、未来予測ものだと思い込んでいた。
もちろん未来予測ものではあるのだが、科学技術で暮らしぶりはこう変わる、といったようなSF的なものではなく、どことどこが戦争して、どこが衰退して、といったような極めてポリティカルな内容だった。
しかも楽観的なことは全然書いてない。
地政学と「歴史は繰り返す」という格言に基づいて、冷厳に今後の世界のパワーバランスを述べたものだ。
結論を書こう。
21世紀は引き続きアメリカが覇権を唱え続ける時代だ、と言う。
そしてこの本は、あくまでアメリカを中心に書かれた政治・軍事の本だ。
続けて言う。
アメリカに挑戦する勢力は色々出てくる。
今後中国とロシアが強大になるが、中国は豊かになればなるほど分裂の方向に向かい、ロシアは資源大国となり再び冷戦を招くが、かつてのソ連のような力はなく、やがて瓦解する。2020年にはこれらの国は力を弱めてしまう。
その後弱った中国とロシアの空洞を埋めるため、東からは日本が、西からはポーランドとイスラムの盟主となる、かつてのオスマン帝国トルコが勢力を拡大する。
アメリカはそれをある程度は応援するが、増長しすぎた日本とトルコを押さえにかかる。
日本とトルコは同盟を結び、アメリカの軍事力を叩こうと奇襲攻撃をかける。
2050年に戦争が勃発する、とフリードマンはシナリオを描く。
が、最終的にはアメリカが勝つ。
その時代の軍事力は、宇宙で発電してマイクロウェーブで電力を送り、通信ネットワークで結ばれたロボット(もしくはロボットスーツを身につけた超ハイテクな兵士)たちが主力であるという。
さらにその後は現在GDPでは十数位にある、メキシコなどが台頭し、やがてアメリカすら脅かす存在になる。
なぜ日本とトルコが同盟を結んでアメリカの覇権に対抗しようとするのか。
その理由は多分に地政学的な分析によるものらしいが、力が弱まったエアポケットに、吸い込まれるようにして近隣の諸国がそこに入っていくのは、自然なことだろうとは思う。
とにかく、近未来ものとしては十分刺激的な本だし、SF戦記小説としても面白かった。
個人的な希望としては、アフリカ諸国や東南アジアやインドなどがもっと出張ってきてもおかしくないのではないかと思うのだが、ポリティカル予測の世界では、これらの国々は、あまり力が強くならないだろうとの予測なのか、それとも著者がそれらの国々のことをあまり知らないのか。それはわからない。
松本清張『ゼロの焦点』
次男の買っているテレビ番組の雑誌を見ていたら、松本清張氏の『ゼロの焦点』が映画になって近く公開されるとの広告が載っていた。
う~ん、久しぶりにサスペンスでも読んでみるか、と思い、早速購入した。
ちなみにカッパノベルスでなんと500円という価格で売っていた。(文庫本より安かった!)
フォトリーディングを使って読んでみた。
フォト・・・をやっている間はとにかく脳ミソに直接放り込む感じなので、内容を理解しているのかどうかも全然わからない。
終わってすぐに「スピードリーディング」という手法で追読した。
日頃ビジネス書類ばかり見ているせいか、小説はスピーディーに読める。
途中用事が入ったりして断絶はあったものの、大体1時間ちょっとで読み終わったのではないか。
昭和34年というから、50年前の推理小説である。
しかし、時代背景を別にすれば、全然古臭くない。
西村京太郎も内田康夫もかすむくらいの感じだ。
面白かった。
『2010年長谷川慶太郎の大局を読む』
10年以上前、長谷川慶太郎氏の『19xx年、世界はこうなる』を読んだ。
その年の版には、ワシントンだかどこだか忘れたが、アメリカのある主要都市では通信料金が月額30ドルの定額で利用し放題だ、と書かれていた。
その頃我が国はISDN花盛りで、NTTは利益の極大化を図る一方で、新規参入キャリアの値下げ攻勢と古い設備の償却負担に苦労しながら長距離料金の値下げを徐々にしていく、という、いかにハードランディングにならないように事業を運営していくか、ということに神経質になりながら経営がなされていた時期で、とても「定額」などという料金体系に切り替えられる状態ではなかった。
しかしその1年後ぐらいに、NTTも「フレッツISDN」という定額サービスを打ち出し、通信サービスの定額制サービスが広まっていった。
日本でも定額制が必要なのだろうなあ、と思いつつ、そんな価格破壊みたいなことをしてNTTは持つのだろうか、でも時代の流れかも知れないし、それができればもっとインターネットの利用は増え、結果的にNTTも素晴らしい会社になるだろう、そういう意味ではこの「アメリカの定額制の情報提供」は重要なメッセージだよな、と読んだ当時は思っており、それが1年後に実現したから驚いた。
それ以来、この人の提供する情報にはきちんと聞き耳を立てておかなければならないな、と思うようになった。(ここ数年、通信事業に対しては全く言及なさっていないのが寂しいが)
さて新著の『2010年 長谷川慶太郎の大局を読む』であるが、これまで自民党の政策にお墨付きを与え続けてきた人だけに、今の民主党政権の政策に対して、無批判に賛同することはできないのであろう。
小泉政権の功罪について、わかりやすく論評し、民主党の政策については、是々非々で論じておられる。
今回のメッセージのおおよその内容。
・アメリカの軍事力は世界において圧倒的に強く、そのため当分戦争は起こらない。
・戦争が起こらない世界では、デフレが続く。
・このデフレは100年続く。
・デフレの世界では、政府の役割は小さくすべきである。
・その意味では小泉政治は政府の役割を小さくするための取組であった。
・小泉首相はその意味をきちんと説明しなかった。
・閣僚にも伝わらず、国民にも伝わらなかった。
・お金を集め、効率的に投資する機能はニューヨークにあり、今後もニューヨークが世界の金融の中心であり続ける。
・電気自動車は部品点数がガソリン車の三分の一でいい。(部品メーカーの淘汰が起こる)
・研究開発がこれまで以上に重要になってくる。
・アメリカの自動車産業は日本メーカーが担っていく。GMの復活はありえない。
・中国は世界の工場から市場へ転換した。
・隣国の政治的崩壊が東アジア経済の特需をもたらす。
・・・というようなことで、残念な点は「デフレ経済下では、小さな政府でなければならない」ということの理由がほとんど述べられていないため、なんで?という点が理解できないことである。ここのところをもう少し詳しく勉強しなくては、と思う。
横内祐一郎氏の『運を掴む』
フォト・リーディングの萩原京二講師が「感銘を受けた」と紹介しておられた、横内祐一郎氏の『運を掴む』(学研)という本をフォト・リーディングを使って読んだ。
戦時中、教師をやっていて20歳で親の農家を継ぎ、大成功している最中に、農業自由化の動きを聞いて農家から楽器製造業へ転進。
昭和35年に32歳で富士弦楽器という会社を当初3人でスタートさせ、遂には世界一のギターメーカーに仕立て上げた人物の自叙伝である。
元々自分自身で色々工夫したり努力したり、という人であったことが農業を営み始めた時の話でわかる。
しかしこの人の成功には、その時そのときの、偶然の人との出会いを最大限生かしていることが大きく影響している。
私の印象に最も強く残ったのは、ギターを直接外国と貿易するために単身アメリカに渡り、電話でアポを取ろうと必死になるも全然取れず、飛び込み営業するとアポなしはダメと断られ、遂に3ヶ月全く営業の成果が上がらず、街角で泣き崩れていた時に、たまたま通りかかったハリーという名の海軍のお医者さんから「どうして泣いているのか」と尋ねられ、わけを話したところ、親切にも家へ招かれ、英語がうまく話せないことがアメリカでのコミュニケーションがうまく行っていないことの原因だとわかり、それから毎日医師とその奥さんから英語のレッスンを受け、米国人の言葉がわかり相槌の打ち方などもわかった10日後、その家を辞し、次の日にアポイントの電話を入れたところ、即OKとなり、それからというものニューヨーク、ワシントン、シカゴなど、アメリカ各地で注文が取れまくり、遂に世界へと進出するきっかけになった、という下りである。
3ヶ月の間、日本にいる三村社長からは「何を遊んでいるのか」という主旨のことを言われ、辞表すら送っていたという状態だったのが、偶然の出会い、それも相手から声をかけてもらい、それに素直に応じて必死に学んだ、といういきさつ・・・。
キーワードは、「八方手を尽くした後」、「偶然の出会い」「先方から声」「素直に応じた」「必死で学んだ」といったあたりだろうか。
その後も、昭和40年代のギターブームとその後の過剰在庫による経営危機、倒産寸前の状態から銀行による支援の手、火事での経営危機、など、幾多の危機が降りかかってくるのだが、その都度、誰かが支援の手を差し伸べてくれたり、社員が団結して危機を乗り越えてくれたりと、この人の日頃の「人を大切にする経営」と「他によって生かされる」ことによって、ダウンとアップを繰り返しながら成長しているのである。
グレコ、と言えば、私のような者まで知っているギター業界の高級品である。
それが、この富士弦楽器(現社名はフジゲンというらしい)という、社名を知らない会社の品物であり、マーチン、ギブソン、フェンダーなどという名だたる世界的なギター・メーカーから工場見学に来るなど、世界的なメーカーに創業からわずか20年ほどでなった長野の会社だった(私が中学生の時点で)などとはついぞ知らなかった。
横内氏の著書から学ぶことは大変多かったが、いくつか列挙する。
・目標を極力具体的に設定し、それに向けて行動していくこと
・一人でも部下を持ったら自分はリーダーであり、その人の良い点を100見つけ、それを相手にも周囲にも認めさせるよう語ること
・そしてその人の能力よりも一段階高い仕事をさせること(自らにも一段階高いハードルを設けること)
・他人のためになることを念頭に置いて何事にも取り組むこと
・非凡な考え方をし、非凡な行動をすることが周りから感謝され成功する秘訣であること
残念ながら現在は廃刊のため、古書で手に入れるしかないようである。(by アマゾン)