トーマス・マン『魔の山』を読み終えて

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年明けから挑戦していたトーマス・マンの『魔の山』をようやく読み終えました。1912年に書き始めて1924年まで12年間、1200ページの大作となったものです。私も意を決してから読了するまで5カ月かかりました。理解できたかというと文字を追うのが精いっぱいでほぼ理解できていないと思います。

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そもそもどういういきさつでこの本を読むことにしたのか、記憶が定かではありません。大方、筒井康隆さんがお勧めしていたから、というような理由ではないかと思いますが。
最初は岩波文庫で上巻を買って読み始めようとしたのですが、全く歯が立たず、新潮文庫であればもう少し平易な言葉で書いてあるかも知れないと思い込み、新潮文庫で上下巻を買い、取り組みました。しかし新潮文庫の方も難解であることは変わりなく、これは原書がそもそも回りくどく難しい単語を並べ立てているからかも知れないなと観念して、そのまま続けました。
訳した高橋義孝さんが解説で「ユーモア小説」だと書いておられますが、どう読んでも面白おかしいという感じではありません。むしろ本当に難解で、書いてあることの1割も理解できていないような気がします。シーツ・オブ・サウンドばりの文字が敷き詰められている書面、観念的な言葉の羅列、しかも突然場面が変わったり、行間を読まないといけないような意味深な文脈。
ではありましたが、最後まで読んで「ユーモア小説」だと言われれば、そう思えなくもありません。むしろ、壮大なドタバタだったのではないかとすら思えてきました。小説であることを考えると、登場人物の死すら「出来事」として傍観的なものとして扱われているのかも知れず、私の中では筒井康隆さんの『俗物図鑑』が思い起こされてきました。
そうは言いつつ、箴言的な、「あっ」と気づくような文章もあちこちにあり、小説でありながら沢山のページの角を折り曲げ、線を引くというようなこともしました。
箴言ではありませんが、20世紀の前半に書かれたこの本で、こういうことを書いていたのだ、と感じた部分を一つだけ紹介しておきます。『魔の山』上巻p570に「だから意識なるものは、結局のところ、生命を構成している物質の一機能」という言い回しがあり、これは最新科学の一つかも知れませんが、毛内拡さんの『心は存在しない』(本は読中)という著書に関連してラジオで「結局肉体と別に魂というものがあるわけではない」というようなことをおっしゃっていたことに通じるような気がします。もちろん学説の一つであって、解明されたものではないのかも知れませんが。
わからないことが多いため、生成AIに色々尋ねてみました。得られた回答らしきものをnoteに投稿しましたので、ご関心がありましたら覗いてみて下さい。https://note.com/light_quokka2104/n/n1daf7d493f51

さ、次へ。

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読書について(備忘メモ)

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ショーペンハウエルではありませんが、読書について、今後の計画などを書いておきます。個人的なメモです。
先日このブログに書いた通り、今、トーマス・マンの『魔の山』と取っ組み合いを演じています。相手のトーマス・マンは既にこの世の人ではなく、そもそも書物との取っ組み合いなど相手のあるものではないので、独り相撲を取っているようなものです。
上巻が約700ページで、どのページも空間がなく、ページ全部を文字がひたすら埋め尽くしており、しかも書いてあることが日常的な会話からだんだん思想や哲学の難解な対話になっていき、とても理解ができません。ようやく上巻が終わったと思ったら下巻はなんと上巻よりも100ページも多い約800ページのボリュームです。

どのページもこのように、ほぼ文字で埋まっています。しかも難解。


本をまとめて読む時間が取れないこともあって、就寝前の10分20分がせいぜいですが、ようやくその下巻の600ページ辺りまで来ました。あと200ページほどです。ここまで来ると、色々な登場人物の特徴やそれぞれの人が何を象徴しているのか、或いは、この小説が書かれた二十年後に起こったドイツの悲劇を暗示するかのような登場人物のセリフなど、疑問に感じていたことを生成AIに尋ねてみる心の余裕も出てきました。

これが終わったら次は、ということを考えるゆとりも出てきました。これだけの重いものを読んだ後、すぐにまた大作に挑む気持ちはありませんが、今後読む予定の、ちょっと重めの本について自身の備忘としてリストアップしておきます。
生きているうちにあとこれだけは読んでおきたい、できれば現役で仕事をしている間に、と思っている本たちです。
・レ・ミゼラブル
・白鯨
・戦争と平和
・罪と罰、未成年、カラマーゾフ、白夜を除くドストエフスキーの残りの全著作(邦訳のあるもの)
・収容所群島
・ユリシーズ
・ローマ人の物語、海の都の物語を除く塩野さんの全著作
・知の果て至上の時、ほか中上健次さんの未読の書
・ほかに、孟子と正法眼蔵も、できれば読み切りたいと思っています。

学んで考えて動く。必ずしもこの順番でということではありませんが、学びと行動と思考をバランスよくやっていくことが必要で、そのためには、古典文学みたいなものも、なるべく現役中に読んでおきたいと考えています。確認し、学び直し、修正し、また動く。上の本を読み切るのに何十年かかるかわかりませんし、現役中には難しいかも知れませんが、仕事を退いても生きている限り、この姿勢でいきたいと、今は思っています。

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