倉益幸弘さん率いる「株式会社インパクト・コンサルティング」の支援現場に同席させていただいてから4年半になります。機会を見ては付箋紙を使ったアナログコミュニケーションの真似事をさせていただくようにしています。
先日は、ある組織のある部門で「新しい事業の提案があったが、具体的にいつ誰が何をするのかがまったく考えられておらず、このままでは始まらない」という相談をいただき、すかさず「付箋紙会議」の提案をしました。
現場の責任者・実務者など最低3人、できれば5~6人くらい集めて下さい、とお願いし、大きめの付箋紙とマジックと模造紙の用意をしていただきました。あいにく模造紙は伝わっておらず、使っていないカレンダーの裏面を張り合わせて模造紙もどきを作って行いました。
今回のテーマのポイントは、提案されている新規事業を実施するために、具体的に何をしなければならないかが、関係者の間で共通の認識になり、それを誰がいつやるか、についても関係者が共有することです。実施すべきことと実施すべき人が決まれば、あとはやるだけです。
先に発想するためのガイドを提案しました。「許認可」「ハードの整備」「人のスキルや雰囲気などソフトの準備」「集客」などです。これにこだわる必要はなく、これ以外のアイディアが出てきてもどんどん出していただきます。ガイドはあくまで発想のための呼び水のようなもので、「人」「モノ」「金」「情報」といった枠の提示でもなんでも良いと思います。
参加されたメンバーにそれぞれ何をしなければならないかを考えてもらい、考えたことからどんどん付箋紙1枚に1件記入してもらいます。この「1枚に1件」が大事で、極力キーワードだけを書いてもらうようにします。
書いていただいた付箋紙を模造紙もどき(もちろん白い面)に貼っていきます。今回は時間軸を最初から横軸に取るようにしました。書いていただいたものをどんどんいただきます。ある程度貼ってから、少しずつ整理していきます。一枚一枚について、意味や内容を確認します。同じ内容のものがあれば隣に貼ります。一枚も「これは無関係だ」と言ってはずしたりすることはありません。こうすることによって、皆さん自分の出した考えが大切に扱われているという誇りが芽生えます。とまあそれほどおことはないにしても、少なくとも悲しい気持ち・失望・挫折感を味わうことはありません。一枚一枚を丁寧に扱うことも大事です。どうしても今回のテーマと関係なく欄外にずらす場合でも、書いた人の同意をもって確認してからずらすことが望ましいです。
書いてある付箋紙が具体的ではない場合、「これを具体的にするにはどうしたらいいですか?」とか「これの前にすべきことはありますか?」などと聞いて、皆さんから声を出してもらいます。出てきた意見をまた誰かに付箋紙に書いてもらい、それを発問のきっかけになった付箋紙の下や左側や右側など、時間軸を意識して関連付けて貼ります。
メンバーが同じ方向を見ながら一緒に文字を見て、ずれがあれば合わせるための付箋紙を新たに追加し、それをまたみんなで見て、ということを繰り返していると、ファシリテーターが発言しなくても、メンバーの方から異論や疑問や建設的な新たな提案などが出てきます。・・・といったような議論の活性化と認識の共有が短い時間で形成できるのがアナログコミュニケーション、付箋紙会議のメリットではないかと思っています。
仕事の量やリミットが見えてくると、従来の担当決めだけに縛られない、自由な発想が出てきます。仕事の担当決めに従ってものごとを考えていくと、特定の人に負担がかかりすぎたり、組織の硬直化を招いてしまう恐れがありますが、やるべきことを洗い出してからやる人を考えると、ものごとの優先度にあった人のアサインがやりやすくなります。もし担当としてみんなで決めた人にその仕事をするためのスキルが足りない、となった場合はみんなでどうサポートするか、という議論もできます。
こんな感じで進めてみた結果、参加したリーダークラスの方からは、「一人で事前に考え、ある程度完成に近いものができていたと思っていたが、現場の人とこういう風に話し合うと、想像もしていなかった問題点が明らかになったし、吐き出すべきものを全部吐き出し、取組事項と役割分担もできてスッキリした」というコメントをいただきました。
このグループのミーティングの進め方を、近く、組織全体に紹介する予定です。紹介するのはこのグループのメンバーです。各グループで同様のミーティングを実施してもらい、組織の再活性化に活用していただくことができればと思っています。