今頃ではありますが、横溝正史さんの名作『本陣殺人事件』(1948年第1回探偵作家クラブ賞受賞作)を読みました。
私が高校生の頃、角川映画が花盛りで横溝さん原作の映画「犬上家の一族」「八つ墓村」が大ヒットした覚えがあります。
当時書店に行くと、角川文庫の棚には横溝正史さんの著書がずらっと並んでいて大層興味を惹かれたものですが、表紙が結構おどろおどろしくて(著者ご自身は私生活では「釣り針に指をひっかけて血が出た」という話すら嫌がる方らしいですが)、絵を見ているだけでも陰鬱な気分になりそうだったのでこの年になるまで遂に実際に読んでみる機会がありませんでした。
それでも「名作」と言われるものに手を出さずにいるのもなんだと思い、ようやく一冊。
戦後の早い時期に本格的な推理小説の扉を開いた作品だということで、この本の後、色んな推理作家が意欲的な作品をどんどん世に出したそうです。
かの金田一耕助の来歴や探偵業を始めるきっかけなども書いてあって、金田一シリーズをこれから読もうかと考えている人にとってはお薦めの一冊です。
私自身は、この後『獄門島』『悪魔の手毬唄』『仮面舞踏会』『病院坂の首縊りの家』なども読んでみたいと思うくらいに横溝ワールドに入り込みそうですが、それは後日のお楽しみ。
月別アーカイブ: 2016年1月
岩崎夏海さんの『もしイノ』(もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーのイノベーションと企業家精神を読んだら)
「もしドラ」に続く第二弾。
不覚にもドラッカーの『イノベーションと企業家精神』という本があることすら知りませんでした。
ドラッカーの本はとにかく示唆に溢れていて、しかし、書いてあることをそのまま現場に適用しようと思っても私ごときはうまく使えないことが往々にしてあります。
そういう観点からすると、経営の現場にどう使うかというストレートなやり方でなく、もっとレベルを平たくして高校野球の現場を改革するという落とし込み方はとても平易で入りやすいものでした。
恐らく原本のエキスをしっかり入れ、かつ岩崎さんの持っている色々な知識も織り交ぜることで、一つの完結したマネジメント本になっていると思います。
私が参考になった点をいくつか列挙しておきます。
1.企業家は7つの変化=機会をうまく捉え、変化に乗る必要がある。
①予期せぬことの生起
②ギャップの存在
③ニーズの存在
④産業構造の変化
⑤人口構造の変化
⑥認識の変化
⑦新しい知識の出現
2.説得とは相手の得を説くこと。
3.トム・ソーヤーのペンキ塗りの逸話(人を動かす秘訣)。
4.古くなったものやことを廃棄することをシステム化していくことの重要性。(イノベーションを魅力的なものとするための第一段階・・・しかし人を同じように扱ってはいけない。他人をモチベートするのは困難だが、居場所をうまく提供できればやる気と自信がわいてくる場合が多い。それをマネジメントがうまくできるかどうか。)
5.企業家的な企業では、トップマネジメント自ら開発研究、エンジニアリング、製造、マーケティング、会計などの部門の若手と定期的に会う。(良い会社はトップとのコミュニケーションをしっかりとっている)
6.型の重要性(坂本龍馬は剣術を知らない人たちを戦力化するために「とにかく振り下ろす練習をしっかりしなさい」と指導した)
その他その他、示唆に富む本で、ドラッカーにインスパイアされてこういう本が書けるというのは素晴らしいことだと感じ入りました。
ホワイトアウトの日曜日と『あの日、パナマホテルで』
今日は富山で作家宮本輝さんと女優中江有里さんの北日本文学賞の対談の日。
宮本輝さんは『蛍川』以来のファンだし、中江有里さんは私が初めて広報担当になった年にNTT116のCMでコマーシャルデビューなさった人。
午後2時の開演に間に合うように少し早めにと思って正午頃出発したのですが、これこのように2メートル先が見えないホワイトアウト状態で、対向車も直前まで見えず道の端っこも信号機もよく見えないことがわかり、とてもとてもまともに富山まで行きつけるとは思えず泣く泣く断念。
数年前、中江有里さんがラジオでジェイミー・フォード氏の『あの日、パナマホテルで』という小説の紹介をしておられました。
中江さんの解説がとても感動的だったので、こりゃあ何かの縁だ、読まなきゃと思いつつ早や数年。今回の対談を聞くまでには読了せねばと年明け以降の自分への宿題にしていました。
純文学的なものはあまり得意ではないので、ついつい別のSFやドタバタを読んでいたのですが、さすがに今日は最終日のため、残り半分ほどを一気呵成に読み終えました。
まあなんというか、もう、ボロボロもんでした。それも最後に来て一気に、ではなく、半分を過ぎたあたりから、これでもかこれでもかと心を揺さぶる登場人物たちの心情・行動・愛。読んでは顔をぬぐい、また読み、またぬぐい、の連続でほとんど感極まった状態になりました。また、もし自分が主人公のヘンリーのように勇気あふれる少年だったらなあと思ってみたり。ある種『蛍川』に似ていなくもない少年の恋。こちらは第二次世界大戦中のアメリカでの出来事で、スパイ容疑をかけられた日本からの移民と中国系移民の話であり、背景も結末も全く異なりますが、共通点もあるように感じました。
中江さんっていう人はこういう本を日々読んで感性の高い人になっていってるんだろうなあ。できれば「ありがとう、あなたの推薦図書、ようやく読みましたよ、とっても良かったですよ」と直接お礼を言いたかったのですが、今日のところはここに感謝の気持を延べさせていただくことにしましょう。
「カラマーゾフ」がウチにやってきた
かの筒井康隆さんがこの年になってようやくちゃんと読んだというドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』。それも亀山郁夫さんの訳でようやく読めたと仰っていました。
私もここ数年喉から手が出そうになっては引っ込めて来ましたが、筒井さんのインタビューに刺激を受け、遂に、ともかくお呼びしようということで、我が家にワンセット来ていただきました。(またまた積ん読が増えるだけだとは思いますが)
あまりにも重いテーマのようなので、ついていけるかわかりませんが、ともかく、何年かかっても読んじゃろうと思っています。
さて今日は日中青空くんがとてもよく頑張ってくれ、暑いくらいでした。もっとも夕方からはぐんぐん気温が下がり風は強まり海は荒れだしたので、いよいよ北陸の冬の到来の模様です。そんなわけで、今年最初のコリトリエさんで体をほぐしてもらい、明日からの大忙しに備えたひと時でした。
いくでえカラマーちゃん!(読了報告はいつのことになるかわかりません。悪しからず。)
雪のない正月のキャンパスと富山県のへそ
富山国際大学での「情報社会論」の授業も早いもので12回目を迎えました。
新年最初の授業では「情報は公開すべきものと保護すべきものの内容やバランスが大切であり、そのために皆腐心している」ということを法律や事例などの話を交えてお伝えしました。
さて本学の職員さんに聞きましたところ、長年このキャンパスに通っているが、ここまで雪のないのは初めてだとのこと。標高180mぐらいあるのですけどね。しかし北の方は冬真っ盛りのようなので浮かれてはおれませんし、田んぼに雪が積もらないと害虫が元気になってしまって稲作に影響が出るとのことです。が、移動するには楽だし到着時間の予想も容易にできる点は助かります。
帰路、少しゆっくり辺りを走っていたら、偶然「富山県のへそ」という立て看板が目に入ったので立ち寄ってみました。
なんじゃこりゃ?という感じですが、国土地理院が各都道府県の質と量の中心地点を認定しているれっきとしたものだそうで、同院のホームページにも掲載されていました。富山県の場合、北緯36度38分21秒・東経137度15分54秒の地点が重心に当たるそうです。富山県が傾きそうになったらみんなでここに集まってバランスを取りましょうか。