伊藤計劃さんの『ハーモニー』

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そういうSF作家がいたということをつい先日まで知らずにいました。
作家の名前は伊藤計劃。
1974年に生まれ、2009年に病院で逝去。
小説は病室で書いていたとのことです。
デビュー作が『虐殺器官』というちょっと敬遠したくなるようなタイトルですが、「SFが読みたい! 2008年版」で第1位になったものらしいです。
その後メタルギアソリッドなるゲームソフトのノベライゼーションを著したりしつつ、長編第2作目がこの『ハーモニー』というSF小説です。
IMG_2841書店で『虐殺器官』と『ハーモニー』が並んで平積みされていました。
『ハーモニー』には帯がついていて「2015年劇場アニメ化」と印刷されていました。
どこかの書評で「大災厄後のユートピアで、3人の少女が戦う物語」というようなのを目にしていました。
パラパラめくってみると、html文みたいなものが随所にあり、コンピュータ言語小説など読めるはずがない。あかん!無理や!と一度は断念したのですが、いやいや、日本人が書いた小説なんだから読めないはずはない、という思いと、今年アニメ化されるという情報、さらには著者がわずか34歳で亡くなったが、本作でフィリップ・K・ディック賞を受賞した夭折の天才作家だ、ということなどから、読めるやろ!今、読まなあかんやろ!という思いに駆られて購入。

html文っぽいのがあちこちに意味なく(意味あるんですが)並んでおり、わからないのでその部分をすっ飛ばしてなんとか読み進めました。
結局、最後まで行ってなんなのかが理解できました。深い構成になってます。わかると面白い。ははーん、ってなります。
内容は書きませんが、主人公らしきトァンという女性。これが精神的にとっても強いヒロインなんですが、その一方でとても深い悲しみを抱えています。女友だちの絆。彼女の親友であり仇でもあるミァハ。実はトァンよりさらにひどい過去があります。まるでどこかの宗教疑似国家を予見したかのような件があります。作家というのは時折すごい予言・予見を小説の中ですることがあります。この人もあの地域の現在を見てきたのではないかと思うくらいどきっとします。

SF好きには面白い小説だろうと思います。
この小説の生まれた背景には、病室のベッドの上で薬やら看病やら管やらで生命を維持している状態だからこそ出てくるイマジネーションみたいなものがあったのかも知れません。人間の想像力・構想力のすごさかなと感じました。
さてこの人の遺作(途中)に書き継いで完成させた円城塔氏の『屍者の帝国』を読んだものかどうか。

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