中島孝志さんの『キラーリーディング』

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 たぶん今年最後の読書。
 中島孝志さんという人の『キラーリーディング』
 速読法の本は何冊か読んでいる。
 私の場合、その技術をちゃんと修得して、たったかたったかと読んでいけばいいはずなのだが、読み方がなかなか速くならないのが難点。
 とは言え、何か目新しいやり方がないかとまたしても速読法の本を読んだ次第
 言えるのは、自分に必要な情報をいかに早く得られるか、が速読法、短い時間で大量の本をモノにする技術だということ。
 この本に書かれていたエッセンスは、
 ①まず「前書き」を読む。
 ②次に目次を読んで全体の構成を掴む。
 ③掴んだ全体像の中で自分が必要な情報を得られそうな箇所(章)を類推する。
 ④できれば、著者が肩の力を抜いて書いたであろう「あとがき」も読んでおく。
 ⑤あたりをつけた章に行ったら、その中でキラーフレーズを見つける。
 ⑥キラーフレーズの中のキラーワードを見つける。
(注)その際、キラーフレーズやキラーワードは、別に著者の最も言いたいことやこの本の中の核心ではなくとも良い。自分にとって重要な情報であればそれがキラーフレーズでありキラーワードなのである。
 ⑦本を読むときは付箋を活用する。ざーっと読み進める途中に気になる箇所があったら付箋をどんどん貼っていく。
 ⑧後で付箋の箇所だけを読み返し、重要だと思ったところだけパソコンに打つ。
 ⑨情報整理は京大カード(B6のものが最もポピュラー)を活用し、読書メモを作る。
 ⑩デジカメも使う。メモのパソコン打ちも活用する。ひたすらどんどんパソコンにデータを取り込む。キーワードを自分なりにつけて放り込んでおく。(後でキーワードで検索すれば、整理して保管しなくても取り出すことができるのがパソコン管理の強み)
 ⑪音声入力も活用する。この著者の場合はICレコーダを活用している。こちらもキーワードを音声ファイルに付与した上でパソコンに放り込んでいるらしい。
 といったようなことか。
 ①から⑥は大概の速読本に共通したやり方仕方である。
 ⑦以降は、この著者のオリジナルなノウハウも含まれている。
 ということで、そろそろ速読法の本は卒業して、来年はほんとにちゃんと本を読んで情報をどんどん取り込み、実学として活用していかねばならない。

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数年で日本の製造業は国際的に弱体化するという予測について

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 ある業界紙からの引用。重要な指摘だと感じたので発信させていただく。
 BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)シカゴのハル・サーキンという人物のコメント。
 「中国の賃金は毎年15~20%上昇しており、2015年には生産性や労働の中身の差を加味すると米国の労働コストの90%に達する。」
 「シェールガスの登場で米国の電力コストは日本の40~50%。」(米国では電力の安定供給に問題があるため、各家庭などに非常用電源装置=いわゆるUPTが備えてあるような話には触れられていないが)
 「2015年には多くの製品分野で米国の製造コストが日本よりも20%位安くなる。」
 特にこの最後の予測(製造コストが日本より20%安くなる)が衝撃的である。
 これは日本の製造業の国際競争力が、折角円高の補正があって円安方向に触れつつあって輸出が戻るかなと言われているのに、コスト高という要因でまた輸出が落ち込む恐れが大きいということを意味している。
 つまり、地力としての競争力があると言われている日本の製造業にとって、立ち直り難い問題を突きつける予測である。
 これに立ち向かうには、製造コストを根本的に下げる革新が必要である。
 たとえば日本近海で採れるメタンハイドレードの産業利用を本格化してエネルギーコストを根本的に下げるとか、既にNTTで40~50代社員の賃下げの記事などが出ている(目的は本件とは異なる)が、それに倣い1~2割の賃下げをするとか、産業面での大きな減税をするとか、頭のいい人たちが沢山いるのだから、色々な方策を考えて早急に着手すべきかも知れない。

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怒ることは時として必要ですが、恨むのはよした方がいいよ、という老子のお話し

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 書店で立ち読みをする。
 時々いい文句に出会う。
 過日、妻との買い物の途中に時間調整で入ったある書店。
 文庫本コーナーにあった「老子」についての本。
 老子は岩波文庫その他多くの本が出ている。
 最近では加島祥造さんという方の老子の本がヒットしたのが記憶に新しい。
 さて件の老子本。
 書名は失念したが、いいことが書いてあったので控えておく。
 『老子』第六十三章より。
 「怨みに報ゆるに徳を以ってす。」
 世の中には腹の立ったことについていつまでも恨みに思い続ける人がいるが、仕返しは仕返しで仕返される。仕返しと恨みが増幅されていく。実につまらないことだと思う。
 相手の人にしても、必ずしも悪気があってやった、というわけではない場合もある。
 「確信犯」の場合もあるが、それにしても(もちろん、法的に問題がある行為は当然法廷の場できちんと裁きを下すべきであり、ここではそういうことを論じているわけではありません)
 何かの出来事があって腹が立ったとしても、それを恨みに思う気持ちを少し薄め、徳を加えてお返しすれば、相手が自分の軽率な行為の過ちに気づくこともあれば、またこちらに対して好意を抱いたり、感謝をしたり、・・・そうしてその気持ちが次の好意的な働きかけにつながっていく。
 もしも全くこちらの加徳に気が付かなくてもそんなことは構わない。期待して徳を加えるのではなく、それが自然の動作になっておればなんら気にすることもない。
 しかし少しずつ、毎度毎度徳を加えてお返しをしていけば、積もり積もって、いつかは相手の人が気づくこともある。何度も言うが、それを期待して、金品や行為のお返しがあることを望むのではない。「無償の愛」といってはあまりに大袈裟だが、人間関係の好循環を生み出すちょっとの工夫だと思えばいいのではないだろうか。
 そういうことをお互いが心がければ、職場や家庭やコミュニティで、人間関係のいざこざが長続きすることはない。
 老子はいい。

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企業の持つべき道徳について考える

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 「企業倫理」ということが一時期言われた。
 今は「コンプライアンス」という言い方がポピュラーだが、現実の企業で、人としての清さ、正しさ、美しさが価値観の底流にあるとは、どうも思い難い今日この頃である。
 四半期決算が本格的に導入された結果、あるいは日次管理でPDCAを回すようになった結果、企業はどんどん短期利益を追うようになり、そういう傾向が強まっているように感じる。
 企業を構成しているのは、資本だとか土地だとか労働だとか、いわゆる生産の三要素などと言われており、それらがうまくかみ合って高い生産性や財やサービスを生み出すのだろうが、結局のところ、人がいてはじめて色んなことが成り立ち、提供されるわけで、人があっちを向いていてはうまく行っているものもいずれガラガラと音を立てて崩壊する。
 となれば、やはり、企業を構成する人の道徳心、公正心、公共心、などが利潤追求以上に重要なのではないだろうか。ドラッカーは企業の使命は「市場を作ること」と言っている。利益を生むこと、とは言っていないのである。もちろん企業を生かし続けるために利益はなくてはならない。
 次の財やサービスを還元すべき善の循環をしていくために、適正な利益は必要だし、正しいことをして適正な利益を生まない企業は退場してもらわなければならない。(公共の福祉のための政府の事業は一律には論じられないが)
 ではあるが、利益そのものだけを追求するのは本末転倒である。
 社会に有用かどうか、ということがその大前提にあり、有用なれば利益を得て当然、その利益をまた次の剤やサービスの提供につなげ、またやる気を出すためのエネルギーにもなる。
 社会に有用な企業を構成するのは、社会に有用だと信じ、社会に有用な行動をする構成員、つまり人である。
 企業を構成する「人」が社会に有用であり、社会に反しない行動をすることが企業の存立の大前提である。
 それらを総称して、ここでは「企業道徳」という言葉を使いたい。
 別に目新しいことではない。
 道徳と利潤追求は相反しない。
 マックス・ウェーバーも言っていることだし、鈴木正三も言っている。
 ことさらに、今頃改めて「企業倫理」「コンプライアンス」などというから肩肘張って研修だとかなんだとか言い始めてしまっているが、ことの本質は私たちが小学校で習った道徳の授業での内容で十分なのである。
 人として当たり前の考え方、当たり前の行動、これを愚直に実行していくことが企業にとっても求められるのではなかろうか。
 最近はそういうふうに思う。
 かっこつけた言い方ではなく「企業道徳」に真剣に取り組むべき時期ではなかろうか。

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小出宗昭氏の『カリスマ支援家「小出宗昭」が教える100戦100勝の事業サポート術』

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数年前に友人から紹介された本、小出宗昭氏の『カリスマ支援家「小出宗昭」が教える100戦100勝の事業サポート術』をようやく読んだ。
この人は静岡銀行の出身で経営支援の仕事に携わった末に公的支援機関に出向し、4年ほど前に独立されて企業支援の仕事をしつつ、最近は政府の中小企業施策を担うナントカ委員とかいうのも務めておられる。
そういう人なので、公的機関におけるコンサル手法の本かと思っていた。そういう要素もあるにはあるが、この本の底流にあるのはご自分の後輩たちである、現役の金融機関職員に対する熱いメッセージだと感じた。
つまり金融機関が地域の経済を時間をかけてでも活性化していくためには(それが長期的な経営基盤の強化にもつながるのだが)、これまでのような「融資可能可否」を決算書から判断するという単眼的なものの見方ではなく、経営者や企業としっかり向き合ってその光るポイントを見出し、お金以外も含めた支援ができるようになって欲しい、というメッセージである。そのことを繰り返し巻き返し、本の中で何度も訴えている。とはいえ現実の金融機関は営利企業であり、長期的な取組みだけやるわけにもいかず、企業支援というものは現実的にはやはり公的機関に恃むところ大であろう。
コンサルの進め方や心構え、日ごろの勉強方法や経営者との接し方など、学ぶべき点も多い良書であった。

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冲方丁さんの『天地明察』

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 小説というのは、読み始めとか途中の展開や転換、クライマックス辺りまではいいんだが、エンディング近くになると、離れがたい気持ちに、往々にしてなる。
 この『天地明察』がまさにそういう小説であった。
 この小説は大阪の友人から薦められて読んだものだが、初めの頃は出てくる言葉が難解この上なく、さてどうなることか、と心配もしたが、ストーリーが面白く、ついつい引き込まれ上巻は一気呵成に読んだ感じだった。
 渋川春海の純朴さとひたむきな向学心。作成した問題の誤りに気づいたときの潔さ、それを暗にほのめかした関孝和の深い配慮。素晴らしい江戸人の誇りと気高さに涙が出た。
 さらに北極星を見ながら日本各地の測量をしていく際の、先輩学者たちの純粋さ。想定が当たったときの子どものようなはしゃぎよう。
 まるで映像を見ているような、冲方丁という作家の筆さばき。
 映画化されたがゆえに余計にかも知れないが、岡田准一さんがこんなふうにボケてるんだろうな、とか、宮崎あおいさん演じる「えん」のにらみ顔など、容易に頭に浮かぶので、小説を読んでいるというより、映画を観ているような気にさせてくれる小説だ。
 幕末維新の折、日本が砲艦に脅かされつつも、結局は欧米列強に植民地化されずに済んだのは、この時期(江戸時代初期)に、既に高度な算術の知識・技術を持っていたこと、に象徴されるように、日本の学術・技能のレベルが極めて高かったことが大きいのではなかろうか。
 私たちにはそういう学術能力が伝承されているはず。
 もちろんそれらは、他人の知識の受け売りのみでなく、自分たちで工夫したり新しいものを生み出すオリジナリティも大いにあるはずである。
 苦難の続く日本の政治経済情勢ではあるが、こういう爽やかな生き様をしなきゃ、と心から敬意を表しつつ、この素晴らしい人物たちが織り成す日本のDNAを背負って、みんな頑張りまっしょい。

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