富山県富山市の南部、旧大沢野町、旧細入村のあたり、岐阜県との県境近くに「神通峡」という峡谷がある。
秋は紅葉が素晴らしく美しいと聞いている。
その中でも最南部に「猪谷」というところがある。
冬は富山県の中でも最も積雪量の多いところだ。
その猪谷に行って来た。
JR高山線に「猪谷駅」という駅がある。
その猪谷駅を背中にしてまっすぐ東へ向かう。
国道41号線を突っ切り、峡谷にかかる橋を渡ると目の前を道路が横切っている。
突き当たりは神社だ。
神社の名は<素盞雄社>とある。
いやあ、こんな山里に来てスサノオのミコトに出会うとは驚きである。
神話の世界では、どちらかと言うとアマテラス様を困らせた、荒ぶる神であり、場合によっては反逆者のように扱われることもある神様である。
ではあるが、この神様は、姉のアマテラスと妹(?)のツクヨミとの三柱で、日本神話の一つの重要な固まりを構成している。アウトローではあるが、日本の成り立ちにおいて、たぶんなくてはならない存在なのである。
そういう微妙な神様がこういうところでしっかり信仰されているというのが、不思議な感じがした。
さて、我々の目的はここではなく、道を右に折れてしばらく行ったところにある「宝樹寺」というお寺である。
ここは元々は真言宗のお寺だったものが、室町時代に浄土宗に改宗され今日に至るということで、本尊の阿弥陀如来は恵心僧都源信が作ったものだという。
あいにく御堂には入れなかったが、境内には地蔵菩薩や空海の石像や弥勒菩薩らしき円形の石仏など、様々な仏様がいらした。
寺の外にも石仏の祠があり、さらには先ほどの素盞雄社から少し入ったところには<野仏群>があったり、もっと北上した道路沿いにも石仏の祠があり、さだめし<当尾の里>のような趣である。
いやあ、素晴らしい。
道のそこかしこに石仏が点在している。
まるで旅人を慰めてくれるようなたたずまいだ。
ちなみに、当尾の里は「とおのおのさと」と読み、奈良県と京都府とのほぼ県境にある野仏が道端に多数点在している一帯を指す。
私から見ると奈良県の入り口に当たる場所なので、奈良県だと思うが、行政区分上は京都府らしい。
その昔は寺の堂宇が沢山あり、大変賑わっていた寺町だったようだ。
今は浄瑠璃寺と岩船寺の2ケ寺しかない。
その二つの寺を結ぶ道沿いに、野仏が点在しているのである。
ほっとするのは「笑い仏」と呼ばれる、道からちょっと離れたところに斜めになっておわす仏様である。
富山県の猪谷の方々にとっては「富山の当尾の里」なんてネーミングされるのは迷惑な話だと思う。
が、私はあえてそう呼びたい。
素晴らしいところだ。猪谷。
写真については、不定期ブログ「富山の路傍の石仏をたずねて」(http://toyamanosekibutsu.blog95.fc2.com/)をご参照下さい。
富山にもあった「当尾の里」神通峡
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