10年以上前、長谷川慶太郎氏の『19xx年、世界はこうなる』を読んだ。
その年の版には、ワシントンだかどこだか忘れたが、アメリカのある主要都市では通信料金が月額30ドルの定額で利用し放題だ、と書かれていた。
その頃我が国はISDN花盛りで、NTTは利益の極大化を図る一方で、新規参入キャリアの値下げ攻勢と古い設備の償却負担に苦労しながら長距離料金の値下げを徐々にしていく、という、いかにハードランディングにならないように事業を運営していくか、ということに神経質になりながら経営がなされていた時期で、とても「定額」などという料金体系に切り替えられる状態ではなかった。
しかしその1年後ぐらいに、NTTも「フレッツISDN」という定額サービスを打ち出し、通信サービスの定額制サービスが広まっていった。
日本でも定額制が必要なのだろうなあ、と思いつつ、そんな価格破壊みたいなことをしてNTTは持つのだろうか、でも時代の流れかも知れないし、それができればもっとインターネットの利用は増え、結果的にNTTも素晴らしい会社になるだろう、そういう意味ではこの「アメリカの定額制の情報提供」は重要なメッセージだよな、と読んだ当時は思っており、それが1年後に実現したから驚いた。
それ以来、この人の提供する情報にはきちんと聞き耳を立てておかなければならないな、と思うようになった。(ここ数年、通信事業に対しては全く言及なさっていないのが寂しいが)
さて新著の『2010年 長谷川慶太郎の大局を読む』であるが、これまで自民党の政策にお墨付きを与え続けてきた人だけに、今の民主党政権の政策に対して、無批判に賛同することはできないのであろう。
小泉政権の功罪について、わかりやすく論評し、民主党の政策については、是々非々で論じておられる。
今回のメッセージのおおよその内容。
・アメリカの軍事力は世界において圧倒的に強く、そのため当分戦争は起こらない。
・戦争が起こらない世界では、デフレが続く。
・このデフレは100年続く。
・デフレの世界では、政府の役割は小さくすべきである。
・その意味では小泉政治は政府の役割を小さくするための取組であった。
・小泉首相はその意味をきちんと説明しなかった。
・閣僚にも伝わらず、国民にも伝わらなかった。
・お金を集め、効率的に投資する機能はニューヨークにあり、今後もニューヨークが世界の金融の中心であり続ける。
・電気自動車は部品点数がガソリン車の三分の一でいい。(部品メーカーの淘汰が起こる)
・研究開発がこれまで以上に重要になってくる。
・アメリカの自動車産業は日本メーカーが担っていく。GMの復活はありえない。
・中国は世界の工場から市場へ転換した。
・隣国の政治的崩壊が東アジア経済の特需をもたらす。
・・・というようなことで、残念な点は「デフレ経済下では、小さな政府でなければならない」ということの理由がほとんど述べられていないため、なんで?という点が理解できないことである。ここのところをもう少し詳しく勉強しなくては、と思う。
『2010年長谷川慶太郎の大局を読む』
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