アメリカの自動車メーカー最大手のGMがついに破産法の申請をした。
創業が1908年というから、ちょうど100年を経過しての破産だ。
一応「新GM」として再生するということではあるが、100年企業が音を立てて崩壊したことは違いない。
しかも単に業況悪化ではなく、数十年前から色々問題が噴出していたにも関わらず、売上規模が大きかったことから、なんとか、その欠陥を覆い隠しながら命脈を保ってきたというのが、ほんとのところだろう。その命脈も、巨大なバブル崩壊の影響で、一気に断ち切られたというのがサブプライム・バブル崩壊の決定打、ということだろう。
昨年の11月の何日かの日経新聞に出ていた記事から「アメリカの自動車産業の労働者、つまりUAWの組合員は、日本のトヨタなどの労働者の1.3倍の給料をもらっている」ということが見て取れた。
会社が赤字でヒーヒー言っているのに、そこで働く人たちが、なんと日本一の企業のまだ3割も余計に給料をもらっていて、しかもそれに手をつけて会社としてなんとか生き残っていこうという取り組みをしていないとは、いったいなんたることか、と感じた。
自分勝手すぎる。
日本の通信大手など、自由化の圧力を受けて、50歳以上の従業員の給料を一律3割カットして、なんとか会社の利益を創出しつつ従業員の雇用も守って頑張っているのに、一体全体この人たちはどういう了見か、こんな組織が果たして生き永らえていけるものか、と憤慨した覚えがある。
あれから半年。
やはり生き永らえることはできなかった。
労働組合も甘んじて賃下げを受け入れたようだ。
しかし、そこに至るには数度の投票をして、やっとだ。
全然自分たちの置かれた状況が見えていない、のだ、と思う。
ところで、今回のGMの破産法申請については、世の中の株価などはそれを受けてがくっと下がるといった動きをしていない。
むしろアメリカの株価は急騰したと今朝のニュースで言っていた。
つまりGMショックは既に市場には織り込み済みだったということのようだ。
世界一の自動車メーカーの倒産という大きな事件であるのに、なぜ市場はこれほど冷静でいられるのか。
GMはこれから3割程度縮小するらしい。
となると、関連の下請や関連企業などにも大きな影響が出る。
それでも株価は上昇。
ということは、既にこうなることは、市場は予測していたということである。
その背景にあるのは、クライスラーが先行して破産法の申請をしていたので、それが地ならしになった、というか、地ならし役を担わされたということなのかも知れない。わからないが。
もしそうだとすると、今回のGMの破産法申請に至る道のりというのは、誰かが周到に準備して計画的に描かれたシナリオに基づいたものだったのかも知れない。
それが証拠にかなんにか知らないが、ガイトナー財務長官が、今日と言うこの日に、中国を訪れ、金が足りないから(GMやAIGなどを支えるための国の金が必要なので)国債を買ってくれ、と頼みに行ったらしいではないか。
ま、そんなことを色々考えていてもしょうがない。
国有化は自由主義と相容れないとかなんとか理屈を並べるのではなく、現実の混乱をいかに回避し、安定的に経済を立ち直らせる「知恵」が大事なのであって、その観点から今行われていることが、世の中全体にとっていいかどうか、を私たちは見極めていかなくてはならないのではないか、と思う。
今回のサブプライム・バブルの崩壊で、その欠陥を覆い隠しながら(つまり、粉飾と一緒だ!)、たどたどしく生き永らえてきた、問題のあった100年企業が、遂に息の根を止められた、ということであり、バブル破裂の影響の大きさを感じずにはいられない。
しかし、最終的には、消費経済がいつ、どこまで回復するかだ。
アメリカの住宅価格はまだ下げ止まっておらず、これはつまり、市民の所得がまだ下がり続けているか何かで、安定していないために、住宅を買おうという動きに至っていないことを示す。
むしろ、貯蓄に向かい始めているということすら言われている。まるで十年以上前の日本人の気質のような動きではないか。ほんとかな?
いずれにしろ、ということは、消費経済は、まだ回復していないということだ。
ということは、景気回復の道のりにはまだまだ遠いということであろう。
もう少し、この状態の中で頑張らなくっちゃ、ということだ。
へこたれずに、前を向いて行こう。
100年企業を吹き飛ばした“泡”
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