坂本光司さんの「持続する良い会社」10の共通点

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 昨年暮れに出た複数の経済誌。
 いずれも2018年の予測を特集していましたが、ダイヤモンド誌に少し異色の記事がありました。
 広告企画で「息子・娘を入れたい会社2018」という特集で、広告なので大半は企業のPRなのですが、その冒頭に縫製大学院教授の坂本光司さんのインタビューが載っていました。

 坂本さんは以下のように述べておられます。

・企業の真の目的・使命は、企業に関係する全ての人々の幸せの追求と実現です。

・全国の8000社を超える企業の現地調査をしてわかった、業績が安定的に高い企業は例外なく”人をとことん大切にする人間本位主義の経営”を行っていた。

・全ての人々とは、次の5種類の人々である。
 ①社員とその家族(これが最も大切にすべき人々)
 ②仕入先や協力企業等で働く社外社員とその家族
 ③現在の顧客と未来の顧客
 ④地域住民、とりわけ障がい者や高齢者等の社会的弱者
 ⑤出資者や関係機関
 ※出資者や関係機関の幸せは、前の4人の幸せを追求・実現した結果として実現する。社員及び社外社員第一主義を愚直に実践している企業こそ、結果的に高い株主満足度を達成している。

・持続する良い会社に共通する特徴は次の10項目。
 ①人を大切にする経営を実践している。
 ②価格競争ではなく非価格競争を実践している。
  価格以外の付加価値で勝負できるサービス・商品を持っている。
 ③年輪経営を実践している。
  自然の摂理に反する急拡大、急成長を目指していない。
 ④環境依存・環境追随型の経営をしていない。
  環境が良くても悪くても、取引先からの要求に屈しない。そのためには、その企業でしか創造・提供できない価値のあるサービスや商品を持っていることが条件。
 ⑤バランスの良い経営を実践している。
  一部の分野に特化せず、事業内容に偏りがない。
 ⑥ワンマン経営ではなく全員参加型経営を実践している。
  社員のモチベーションを高める有力な方策の一つは計画作りへの参画である。
 ⑦閉鎖的ではなくガラス張り経営を実践している。
  人事評価制度も透明性があり、頑張れば報われる制度が整っている。
 ⑧情報発信力の強い経営を実践している。
 ⑨人財の確保と育成に注力した経営を実践している。
  好不況にかかわらず、新卒採用と人財教育に力を入れている。
  企業のあるべき教育時間は、所定内労働時間の5%以上、月間でほぼ1日分の教育。金額でいえば、社員一人当たりの人財育成経費は年間10万円以上が望ましい。
 ⑩大家族的な経営を実践している。
  行き過ぎた成果主義ではなく、ぬくもりのある企業風土を醸成している。

 これら10の項目の中には、「1項目目」以外にも私もなるほどなあと思うものがいくつもあります。これはコンサルの仕事においても十分役に立つ情報だと思いますので、今後活用させていただきたいと思います。

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2017年の年末に出た経済誌を総ざらえ

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 最近は毎年年末に主要経済誌が翌年の予測の特集号を出すのが慣例になってきました。
 今回は『日経ビジネス』『東洋経済』『エコノミスト』『ダイヤモンド』の各誌をざっと総ざらえしてみました。
 ユーラシアグループのイアン・ブレマーさんと英国エコノミスト誌のビル・エモットさんが複数の雑誌に登場していました。特にブレマーさんは3誌にまで顔を出していました。ということでブレマーさんの象徴的なコメントから記載していきます。

1.日経ビジネスより

 ブレマーさん:Gゼロの拡大、ポピュリストの増大と権威の崩壊という潮流はさらに加速。トランプ大統領の弾劾は(中間選挙までは)なく、米国第一主義は続く。

 ジョセフ・スティグリッツさん:(中国の今後について)習近平国家主席は以前にはない方法で権限を集中させている。債務主導型の成長を続けてきた。債権問題が深刻化するのを避けつつ成長を維持できるか。

 ビル・エモットさん:(英国について)ジェレミー・コービン氏率いる労働党は格差是正を愚直に訴え支持を高めている。2018年労働党政権が誕生するかも。

 スコット・ギャロウェイさん:GAFA4社の中ではアマゾンが抜け出す可能性が高い。音声アシスタントが既存企業のブランド資産を壊す。今のトレンドが続けば、平均的なミレニアル世代は死ぬまでの間にエフィスブックとインスタグラムに合計2年半分の時間を費やす計算になる。かつて人間が神に聞いていたことを、私たちがグーグルに聞くようになっているとすれば、それは「神」と言えるだろう。グーグルは「脳」、フェイスブックは「ハート(心)」、アマゾンは「胃袋」、アップルは「局部」(アップルは財力や創造性の象徴であり人間の生殖本能にアピールしているから)。

2.東洋経済より

 ビル・エモットさんとリンダ・グラットンさんの対談。
 グラットンさん:日本企業は人材育成にかける費用を減らしてきている。これは間違い。
 エモットさん:日本企業は高水準の利益を上げており余裕はある。人材育成予算が縮小しているのは、非正規雇用が増えたことの裏返し。こういうやり方で競争力を高めようとするのは問題。
 グラットンさん:日本は世界のどこよりも急速に高齢化が進んでいる。日本がこれにどう対処していくかに世界は注目しており、日本はその経験を教えられる。また他国と比べて日本人はロボットやAIに対する信頼が厚く、生産性向上や人生を豊かにしてくれるものとしてロボットやAIがどう役立つかを示すことができる。

 2018年はリーマンショックから10年。先進国も新興国も経済は堅調で「ゴルディロックス(適温)経済」が続くと思われるが、信用危機は10年サイクルで到来するとも言われている。油断禁物。

 ロシア。財務大臣を務めていたアレクセイ・クドリン氏に注目。首相に指名されるかも。もう一人の注目すべき人物はセルゲイ・ソビャーニン・モスクワ市長・・・だそうです。クドリン氏が提唱する構造改革プランが実現すれば3%成長が期待できるとのこと。

 中国経済。習近平氏の2期目は改革促進。
 2015年12月の中央経済工作会議で提起された「五大任務」によって経済の構造改革が進められるのではないか
 五大任務:①過剰生産能力解消、②不動産在庫削減、③デレバレッジ(債務削減)・資産圧縮、④コスト引き下げ、⑤効率的な供給拡大(略称三去一降一補)
 2020年までの「小康社会の全面的完成の決勝期」に挙げられた3つの重点戦略:①重大なリスクの防止・解消、②貧困脱却、③汚染対策(全面的完成とは、2015年に5575万人いた貧困人口を2020年までにゼロにすること)
 金融政策はやや引き締め(資産管理業務規制など)でいくため短期的には景気減速も予想されるが、6%台の成長を維持し、2020年所得倍増計画達成に向かっていくであろう。

 ライドシェア・カーシェアが浸透。
 日本では白タク行為規制によりライドシェアはまだ導入されていないが、個人間のライドシェア(持ち主が使わない間、他人に車を貸す)は人気が出てきた。カーシェアは借りた場所に車を返すラウンドトリップ方式が主流、借りた場所以外の場所にも返せるワンウェイ方式はまだ。

 メルカリ。
 CASHが出たら即同様のサービスを開始。「メルカリナウ」というサービス。楽天もフリマサービスをメルカリを猛追している。メルカリはモノの売り買いに加え、自転車シェアサービス「メルチャリ」やスキル・知識のマッチングサービス「ティーチャ」などコトのサービスシェアへと拡張を始めている。日本発のフリーマーケットサイトから目が離せない。

 ビットコイン。
 デンマークの投資銀行サクソバンクは2018年に6万ドルまで上昇するがそれがピークとなり、その後は1000ドルまで急落するであろう。各国政府の規制と国家による独自仮想通貨発行が価格急落の要因になる。

 堺屋太一さん。
 2020年が過ぎると、大不況になる可能性が高い。膨大なカネを費やす東京オリンピックが終わって、公共事業が止まり、東京都内にまで少子化が及んで空き家だらけになる。2020年代後半には、医者が猛烈に余る。仕事確保のため健康な人を病人扱いしようとする恐れがある。不動産価格は暴落する。江戸時代でいうと天保のころのような雰囲気になる。近い将来の日本でも社会の安定を壊すようなムードが高まるだろう。閉塞感の源である人口減少問題に対して改革の機運が起こる。具体的には移民受け入れを政策的に行うべき。かつての日本は移民受け入れをし、彼らや彼らの子孫は偉大な業績を残したり日本文化の発展に貢献した。日本人は同化力に自信を持つべき、日本文化は決して日本土着の日本人だけで作られたものではない。

 3.エコノミストより

 嶋中雄二さんの景気循環論。
 キチンサイクル、ジュグラーサイクル、クズネッツサイクル、コンドラチェフサイクルの4つの景気循環サイクルすべてが上昇局面になる「ゴールデンサイクル」(嶋中氏命名)という視点で見ると、米国は2017年から2018年までがゴールデンサイクルとなる。2019年はコンドラチェフサイクルを除きあとの3つは下降へ向かう。2018年終わり頃から2019年にかけてインフレが発生する可能性がある。(米国のことです)

 水野和夫さんの予言。
 ゼロ金利下では近代資本主義は成り立たない。国家は労働分配率を高める努力をせずに、金融緩和のための低金利政策に邁進し、ROE(株主資本利益率)を高める号令を発することに躍起に。この結果、緩和で市中にあふれたマネーが株式に集中し、一部の投資家のみに莫大なリターンをもたらしている。
 16世紀の欧州では、オランダのチューリップバブル後、リターンを得た商人が、次にオランダと英国の東インド会社、南海会社を選んだ。その後南米との貿易に期待が過剰に膨らみ、株価が急騰し、ある日はじけた。この南海泡沫事件から見れば、チューリップバブルは序章に過ぎなかった。それに引き寄せて考えるならば、10年前のリーマン・ショックも序章に過ぎないのではないか。2008年のリーマン・ショックは世界に大きな景気後退をもたらしたが、足元ではまた世界中の資産価格が異様に上昇している。高リターンを得た一部の投資家が世界中で再投資をしているからだ。
 これから100年は近代資本主義とは違う世界が再構築されていく。今の子供たちの世代が再構築していく。今はその過渡期とも言え、絶えず改善策を見つけては一歩ずつ進んでいくしかない。

 中国のIT巨大企業。BAT:検索大手のバイドゥ、EC最大手のアリババ、SNS最大手のテンセント。

 4.ダイヤモンドより

 地銀は利益が20%減。銀行にとっての脅威はバランスシートの健全性からPLの収益性に移行している。(貸出先の企業の業績低迷=銀行の資産の不良状態がバランスシートの問題、PLの収益性は利益が出ずに企業を維持していけなくなる危険性という点での問題)
 (地銀の本業低迷行の地図はショッキング)

 似鳥昭夫氏のコメント。
 五輪景気や消費増税の駆け込み需要が終わる2020年以降の5~10年ぐらいは大不況になる。不況はチャンス。不動産価格が下がれば立地が確保しやすくなり、大手企業が採用を控えれば優秀な人材を採用しやすくなる。消費減退の影響で一気に寡占化が進む。

 KDDI田中孝司社長のコメント。
 われわれはライフデザイン企業に変革する。が、通信事業がコア事業であることになんら変更はない。
 IoTに関しては現在消費者向けに力を入れている。家のIoT化を実現する「auホーム」はこれから増えていく。鍵となる端末はカメラである。本当に需要があるのは家電操作などの機能ではなく、家の見守り。

 以上、私の勝手なつまみ食い抜粋ですが、2018年またはそれ以降を考えて行くための、自分自身の参考情報として記載しておきたいと思います。

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浅田彰さんの新「逃走論」と塩野七生さんの「自由な思考がイノベーションを生む」というお話

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明けましておめでとうございます。
2018年がスタートしました。

毎年元日の全国紙を買って見比べることが私の新年の行事の一つとなっています。
しかしここ数年は地元駅がJRの経営ではなくなったこともあり、売店で全国紙の取扱が一部のみとなってしまいました。
コンビニに行っても一部の新聞しか扱っていないため、いわゆる「朝・毎・読・日経・サンケイ」の五大紙のうち三紙しか手に入りません。加えて地元新聞と北陸中日を読み比べ。
今年は例年になく目ぼしい記事がありませんでした。新聞業界、パワーダウンでしょうか?

そんな中で一つだけ目を引いた記事が朝日に載っていた浅田彰さんのインタビュー記事でした。
浅田彰さんと言えば、私が大学に通っていた頃、ニューアカデミズムの旗手として中沢新一さんらとともにマスコミにもてはやされていた時期がありました。『構造と力』『逃走論』などという著書が大変な売れ行きだったことを記憶しています。
あれから30年以上経過し、時折論壇などでお目にかかる機会はあるものの、どんな研究をしてどんな言論をしているのかよくわかりませんでした。(私の見ている範囲が限定されていることはあると思いますが)

このインタビュー記事によると、80年代、「家族」「男らしさ/女らしさ」といった価値観が変化する一方、古い価値観やアイデンティティーに固執する(パラノイア)人も多いので、資本主義を半ば肯定しつつ、多様な人々と横につながり、自分も変身していこうと提唱した、これが当時の『逃走論』だったと。そういえば、その後異業種交流などが盛んになった時期でもありました。しかし異業種交流はその後会社で偉くなって行くための人脈形成というふうに一部では変質していったのではないかなと感じています。みんながみんなそうではないのでしょうけど。浅田さんも同様の印象を持ってかどうかはわかりませんが、同じインタビューの中で「逃走の多くは資本主義にのみ込まれた」と語っています。

現代のSNSの時代になっても「「いいね!」数を稼ぐことが重要」「人気や売り上げだけを価値とする資本主義の論理」に重なり、「仲良しのコミュニケーションが重視され、自分と合わない人はすぐに排除する」と分析しています。
多様な価値観をお互いに認めあうことが大切だと私たちは子どもの頃から教わってきましたが、私たちの先輩に当たる年齢の人たちも同年代の人も、驚いたことに私たちよりも若い人たちですら、排除・分断をいともたやすく口にする時代になりました。
浅田さんはそういう状況の中で「自由」を確保するために「ときには接続を切り、ネット村から逃走する必要がある。そのときConnectとCutの間にIが発生する。」と、つないで切断し、切断してつなぐ、その間にいる自分がクールでいることが重要だと説いていました。

この記事の数日前、平成29年12月26日付けの日経新聞には塩野七生さんのインタビュー記事が載っていました。
塩野さんは浅田さんが確保すべきだと語る「自由」について「自由とは基本的には思考の自由」であり、それが「イノベーションにつながる」と語っておられます。
「ネット中毒」や「スマホ中毒」「SNS疲れ」などといったことも言われて久しいですが、人の書いたもの、興奮を煽るもの、その「村祭りの熱狂」から時々少し自分(I)を離して、思考の自由を保つこと(逃走すること)で、心が解放されイノベーションをもたらす元になる、という着想をお二人からいただきました。

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角さんが心していた「10の反省」

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 昨年暮れにセブンイレブンが小林吉弥さんの編集になる「田中角栄名語録 日めくりカレンダー2017」なるものを販売しており、購入して机の上に置いて日々玩味しておりました。(今年は出ているのかどうかわかりませんが。)
 昨日と今日のカレンダーには角さんが「心している」という「10の反省」が2回に分けて記してありました。
 自らの備忘のためここに記しておきます。
①友達と仲良くしたか
②お年寄りに親切にしたか
③弱い者いじめはしなかったか
④生き物や草花を大事にしたか
⑤約束は守ったか
⑥交通ルールは守ったか
⑦親や先生など人の言うことをよく聞いたか
⑧人に迷惑をかけなかったか
⑩正しいことに勇気を持って行動したか
 これらのことはこの人の語ったものを読むと、たぶんにお母様の教えから来ているものが多いのではないかと感じます。
 しかしたったこれだけの項目ではありますが、自分自身で考えるといかにこの10項目を日々やり切ることが難しいか、額の後ろに汗がにじみ出てくるような気がします。
 来年はまずこれらのことが一つでも、一日でもできるよう改めて心していきたいと思いました。

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映画「インビクタス 負けざる者たち」に学ぶリーダーシップ

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 ご存知の方々にとっては今さらという感じでしょうが。
 2年ほど前に友人から「リーダーシップを学ぶなら映画『インビクタス 負けざる者たち』というのがお勧めですよ」と教えられ、以後ずっと気になっていました。
 先だってある団体の管理者研修の講師を仰せつかり、「リーダーシップ」についてというお題をいただきました。
 ドラッカーや倉益幸弘さんのインパクト・コンサルティングで教わった実学などを盛り込みつつ研修内容を固めていきました。
 そうする中で、講義とワークばっかりでもなあと思いつつ、この映画を観てみました。使える部分(失礼な言い方かもしれませんが)がとても多く、これは是非参加者にも観てもらおうと考え、映画の一部分だけではありますが、研修の中に織り込みました。

 私自身はこの映画から次のことを感じ取りました。

 リーダーとは次のような存在である。
 ・方向性を明示する、ぶれない
 ・その気にさせる、実力以上の力を発揮させる
 ・フォロワーに動いてもらう
 ・間違いを正す、動機づけをする(明示的、暗示的)
 ・自分の役割発揮のために他人に働きかけを行う(誰が選んだのであろうとポジションが役割を規定するのである)

 既にドラッカーが「リーダーシップはスキルであり学ぶことができるものだ」と言っています。
 学ばずにできている人もいるとは思いますが、少なくとも後天的に習得できないものではないというのがドラッカーの見方です。といういようなことをお伝えして研修を進めました。

 参加者の受け止めがどうだったかはわかりませんが、この映画、自分としては研修内容にしっかりフィットしていたのではないかなと感じています。

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2017年日経ITProEXPO見聞録

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 先週東京に行ってきました。
 目的は日経の主催するITProEXPOというイベントの観覧です。行き先は「東京ビッグサイト」。
 一番の目当てはIT関係の新しい動向を勉強することですが、先に届いていた案内を見ると、クラウドやらセキュリティやらIoTやらFinTeckやらと今流行りのキーワードが沢山書いてあり、それぞれのコーナーでブースが設けられているということだったので、さぞかし賑やかなことだろうと期待して出かけました。時間がたっぷりあれば講演なども聞けばいいのですが、なにせ日帰りのためブースを回ってパンフを集めて、というのが精一杯。
 色々面白い展示もありましたが、何より目と耳についたのは「働き方改革」という言葉。幟旗にも「働き方改革のためのIT」だとかが書いてあり、またオープンシアターはデモなどでも盛んに「働き方改革」とのたまわっておりました。ちょっと食傷気味になってしまい、もうちょっと皆さんオリジナリティというか個性を出してもいいんじゃないかなあと感じた次第。

 そんな中にあって、目のつけどころがユニークだと感じたのはGMOさんのブース。
 何やら壁一面にバーコードリーダーが百本ほども刺してあり、ひときわ目を引くパネル。
 内容を聞くと、いわゆるショールーミング対策のソリューションだとか。
 ショールーミングとは店頭で良さげな商品を見るだけ見て、買うのは家に帰ってからネットで最安値のものを探してポチッとするというやり方をされると、リアル店舗にものを飾る企業がいなくなってしまうという恐れが言われています。
 GMOさんの提案は、顧客に店舗の会員になってもらい、会員はその場でお金を持っていなくても、会員カードとクレジットカードがあれば、その場で店のバーコードリーダーを使い、JANコードをどんどん読ませていき最後にクレジットカードを挿入して「決済」というボタンを押すだけで、買い物ができるという仕組みです。
 文章ではなかなか伝わりにくいですし、それでも見るだけのお客様をカバーしきれないと言われればそれまでですが、こういう仕組みの必要性に対して具体的に開発し展示して提案するという意思と力に感心しました。

 それともう一つ、大手ではありますが、Googleクラウドの拡張ぶりがすごいなと感じました。
 G Suite Businessというサービスで、AIが人間がスライドを作成する際にデザインの提案をしてくれるとか、Google Cloud Searchというものでは検索をする前に検索すべきものをプッシュ通知で提案してくるとか、Team Driveはファイルサーバの役割だとか。
 たまたま今お客様でグループウェアの導入を検討している企業があり、サイボウズLIVEでまずは色々試行してみるよう勧めているのですが、この企業が実現したいと思っていることがほぼGoogleクラウドで実現できそうな感じなのです。このイベントでの展示内容はそこからさらに進んだ感じで、正直言って何が起こっているのか理解し切れませんでした。世界企業Google恐るべし、と感じました。

 さて、最後に、あまり意味はありませんが、今回のイベント、およそ半日ほどしかいませんでしたが、色々ノベルティをいただきました。皆さまありがとうございました。

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バランスシートの読み解き方の一考察

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金融機関に奉職していた頃、お金は利益が出ている会社に貸すという発想ではなく、貸借対照表(バランスシート)を見て貸すのだ、という話を当時の上司から教わりました。
爾来、バランスシートとの格闘が始まりました。
損益計算書は、本業で儲かっているのか、金利負担が大きすぎて経常利益が圧迫されて返済財源がない、などのことがわかりやすいのですが、バランスシートを見てお金を貸せるかどうかの判断をする、という発想がなかなか理解できませんでした。
実際いまだによくわかってはおりません。

お金を右の方から借りて、左の方で使途を書いたものがバランスシートだ、と言われます。
私の日常では、物事は左から右へ流れていきます。(日本語や英語の横表記しかり、カレンダーしかり、スケジュール表しかり、バリューチェーンしかり、プロダクトライフサイクルしかり、需要供給曲線しかり、損益分岐点売上高のグラフしかり、日本刀の払い方しかり・・・これは日常的ではありませんが)
逆ではないか。
なかなか腑に落ちません。

自己資本は返済しなくていいから一番下、すぐに返済しなければならないお金であるところの「買掛金」や「支払手形」などは一番上、現金や預金はすぐに使えるから一番上。一番上同士を見れば、短期の資金繰りが忙しいかどうかがすぐにわかる。・・・これはまだなんとなく納得しやすいです。しかし現金や預金がすぐに使えるというポジションに置いておくのはいかがなものか。
売上に貢献していない過剰設備なるものがあるとしても、それは自己資本と長期借入金でまかなわれているから大丈夫(固定長期適合率)、というような解説をするものだから、経営者の方々は安心して、ああ、借入で賄えるから良いのだな、と錯覚してしまいがちです。
これがバランスシートの下の方に固定資産が置いてあることの弊害ではなかろうか、などと思うわけです。

歴史をひもとくと、バランスシートを発明したのは15世紀イタリアのルカ・パチオリ(ルカ・パチョーリ)という数学者だそうです。この人物の住んでいたところが右側が陸地でそこから資金を調達してきて、左側の海に向かって船が出て行く様子を見ていたので、バランスシートは右が資金調達、左が資金使途だ、という説明をどこかで読んだような気がします。

バランスシートの配置を、左右を逆に、上下も逆にしてみたらわかりやすいんではないだろうか、とふと思いました。
そうすると、損益計算書から一番最後に出てくる当期純利益が、バランスシートの左上に配置された純資産にプラスオンされて、それを増やしていく楽しみが経営者に伝わりやすいし、そのすぐ右を見ると不稼働な設備や不要な土地がどかんと鎮座していれば、もっと稼働率を高めるか不稼働資産を圧縮しなければ非効率だなと一目でわかる(コンサルとしては説明しやすくなる)のではないかなと思ってみました。
が、そもそもこの現在の形式で500年も続いているものです。そんなアホみたいな思いつきで変わるものではないでしょうし、配置を変えても内容を変えるものではないので、とりあえず細々と個人作業において試行錯誤してみようかなと思っています。
(この問題が自分の中で解決しても「債務超過」の場合のバランスシートの表し方がまた悩みどころになるような気がします・・・)

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失敗を学習のチャンスと捉える、ということについて

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 先日ある中小企業の取締役の方とお話をする機会がありました。
 その企業では、従来の事業の先行きに対する不安から、新しい事業に手をつけておられるのですが、なかなかうまく育つ事業にならない、と仰っていました。
 私は簡単な絵を描いて、アンゾフの成長ベクトルの4つのパターンについて説明し、そして3つの質問をしました。
 1.新事業に進出する際にお客様のどんなニーズに基づいて判断してこられましたか。
 2.それが自社のこれまで培ってきた強みを発揮できる分野かどうか、など従業員とどんなふうに話し合いましたか。
 3.日頃従業員との会話はどんなふうにしていますか、お客様のニーズなどについても話し合っていますか。
 これらに対する答えはいずれも「そういうことはしてこなかった」というものでした。
 以前従業員の声を経営に活かすべく「意見箱」を設けたことがあったそうですが、全く意見が入れられないままに廃止となったそうです。
 その取締役の方は、自分たちがいかに従業員の話を聴こうとしてこなかったか、またお客様のニーズを把握しようとしてこなかったか、お客様に一番近いところにいるはずの従業員とお客様の求めているものについての話し合いをしてこなかったか、などについて、滔々と喋りだされました。
 多くの経営者の方は、第三者である私などが質問をしても、すぐに「下手なことを喋るとコンサルにつけこまれる。」と思われるのか、たいてい「いや、うまくいってるよ」とお答えになります。視線を少しだけ横へ泳がせつつ。
 しかしこの日の取締役の方は、しっかり自分たち役員のやってこなかったことに向き合い、どう変えようかと真剣に考え始めておられました。
 そんな矢先、フェイスブックのCOOであるシェリル・サンドバーグさんの『OPTION B』という本を見ていたら、「人はまちがいについて語れる環境にあるとき、過失を報告しやすく、犯しにくくなる」という一節に当たりました。また「失敗を学習のチャンスと見なす組織文化を育むことの重要性を海兵隊での訓練で学んだ」とも書いておられました。 日本企業には、ことに大企業であっても、失敗を隠す組織があるように思えます。(小室直樹さんの言う「法律とは別に、組織内に時として法律に優先してしまう規範ができる”二重規範”が日本組織に内在する問題点だ」ということと関係があるような気がします) 上が隠すから下も隠す。隠しおおせれば上の人は傷つかず、組織の対面は保たれ、本人は人事で損をしないし、怒鳴られることもない・・・もちろんなんでもかんでも全てオープンにすることが良いわけではないかも知れませんが、隠すことが美徳になりすぎているようだと、組織から自浄能力が失われてしまう、(その原因はまたさらに深いところにあるのでしょうけれども)こんなことが最近の大企業などの不祥事の原因だとすると、チャレンジしようという気持ち、提案しようとする気持ちは抑制されてしまうように思います。(『OPTION B』にも「報告会はうまくやらないと公開処刑のようになってしまう」「個人攻撃・・・」などの記述があります)
 上述の企業では、従業員ときちんと向き合い、その声にしっかり耳を傾けようと役員一同気持ちを合わせて取り組んでいくとのことでした。
 変化が激しく競争の厳しい時代であるからこそ、従業員、お客様の声によく耳を傾け、過ちがあれば早めにみんなでそれを認識し、次はどううまくやってのけるかを考えて実行していく企業が生き残って行けるのではないでしょうか。
 過ちを改むるに憚ることなかれ(論語)・・・これを企業の文化にまで徹底することが大事だと感じました。

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小島俊一さんの『崖っぷち社員たちの逆襲』

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 著者は元トーハン執行役員、現㈱明屋書店(トーハングループ)代取であり、中小企業診断士でもある方です。
 小説ではありますが、実践的経営学ともいうべき色んな要素が詰まっています。経営学とマーケティングとコーチングと財務諸表活用法と論理的・情念的説得術と鎮魂と再生の物語・・・。(鎮魂と申しましたのは、私の想像ですが、某書店への出向時代の悔しい思いがあったのではないかと推察した次第です)

 ストーリーは、地方銀行の元支店長である主人公・鏑木が、銀行から経営の先行き懸念のある地場の書店に、<貸付金の回収>を目的として専務取締役として出向し、財務やマーケティングの知識とコミュニケーションを駆使して再建へ導いていく工夫と成功の物語です。

 物語の詳しい内容はさておき、私が参考になったキーワードをいくつかご紹介しておきます。今後仕事で使えそうなフレーズなどもありました。
・財務3表を車に例えると、損益計算書はスピードメーター、貸借対照表はエンジンの状態、キャッシュフロー計算書はガソリンの残量。(p25)
・企業の再生は、社長の決算書への理解から始まる。(p71)
・心理学によって人を支配し操作することは、知識の自殺である。(ドラッカー)(p111)
・売れるための条件:①人を売る、②店を学校にして体験を売る、③社会貢献や志を売る、④問題解決を売る、⑤期待値の1%超え・・・の5つの具体化。(川上徹也)(p148)
・独自化とは:ファースト・ワン、ナンバー・ワン、オンリー・ワンの3つの具体化。(同上)
・「傾聴・受容・承認」「最後まで自分の価値観を横に置いて、相手の話を聞くこと」(p181)
・愚かさとは、過去を繰り返しながら違う結果を求めること(アインシュタイン)(p187)
・あなたの描く未来があなたを規定している。過去の原因は解説にはなっても解決にはならない」(アドラー)(p187)
・イメージすること、白黒じゃなくフルカラーの4Kで。匂いも音も。きっと叶う。(p188)
・金融機関の信頼を勝ちうるための3つのこと・・・「3か年の再建計画書」「実際の収益の改善効果(コスト削減と売上増の具体策)」「継続的な企業情報(経営状態)の開示」
・人の話を注意して聞けば、90%以上の解決策が見える。(カルロス・ゴーン)(p218)
・一つの驕りが全てを無にする(p231)
・説明は「事実中心の解説」、プレゼンは「事実+感情」(理と情への訴えかけ)(p235)

 関心のおありの方はご一読をお勧めします。

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独立後、NTT関連の初仕事

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先日久しぶりに大阪に行ってきました。
10年以上前NTTラーニングシステムズという会社に出向していた際お世話になった、あるコンサルタントの方からお声をかけていただいたのがきっかけでした。

仕事の内容はNTTグループ企業の営業担当者向け研修において、サブ講師(サブサブ講師かな)を務めるもので、ロールプレイイングやグループディスカッションのお手伝いをするものです。

通信業界を離れて9年以上経ちますが、NTTグループが顧客企業に提供するサービスの根本は変わっておらず、受講者の方々が話しておられる言葉が理解できたのがまず嬉しかったです。もちろん事前にサービスメニューの知識をネットで調べて仕込んでは行ったものの、10年ひと昔と言いますから、話についていけない恐れも十分にありました。言葉が理解できるかどうかはその後の会話に入り込めるかどうかという極めて大事な入口でしたので、ここで一安心。
研修の詳しい中身は書けませんが、ある営業の技法を学んで、練習するというものです。この技法は20年ほど前に私も学んだもので、その後も折に触れ活用したり紹介したりしてきたので、違和感なく参加できました。

技法と並行して受講者の方々に深く学んでいただいたことは、お客様の課題をしっかり把握するということだったように思います。
お客様の話を聞いている際に、こちらが仮説を持って尋ねたことが必ずしもお客様が問題だと捉えているわけではなく、尋ねたことにはさらっと答えられて他の話題に移ったり、お客様自ら別の話題を出されたりすることも往々にしてあります。
その場合、お客様が自ら語っていることに焦点を当て(営業担当が立てた仮説にこだわらず)、仮にそれが真の問題でなかったとしても一旦はよく話を聴き、さらに表層的な話で終わらずに深堀することで課題をより具体化させること(できれば目で見て共有するのが理想)が大事だと思います。もちろんお客様が語っていることが真に危険な問題ではなく、他により重要な危険が迫っている(と営業担当が思う)場合は、例示などをして気付いてもらうよう示唆してみることも大切です。
課題は必ずしも一つではない。むしろ複数存在していることが結構あります。それらをなるべく具体的に(ビジュアルで)双方が認識できるようにして、それが自然体で進んだ場合の影響を、数値や従業員の心理面などを考えながら、着手すべきものの優先度や重要度をお客様と擦り合わせる。・・・とここまで書いてきて、これは営業だけではなく経営相談やコンサルでも同じだなあと、今自分がさせていただいている仕事との共通点があることに気付きました。

私には、24年間お世話になったNTTの社員さんたちに、人材育成やコミュニケーションレベル向上のお手伝いをしたいという夢があります。今回の仕事はその大切な第一歩であり自分の知見が通用するかどうかの試金石でもあると考えて参加させていただきました。プログラムやメイン講師が素晴らしかったこともあり、思った以上にすんなりと入り込めたような気がします。ありがとうございました。

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