秘儀・法隆寺の「お会式 逮夜法要」実見録

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何年か前に、宗教学者の島田裕巳さんがラジオ番組で法隆寺の特別な日の話をされていました。
聖霊院(しょうりょういん)の本尊を一年で一回だけ間近で拝むことができる日のことです。

法隆寺正門

聖徳太子は、西暦622年の2月22日に亡くなったそうですが、現在の暦では3月22日とのことで、この日から三日間毎年法要が営まれているそうです。この法要のことを「お会式(おえしき)」と言うそうです。
「お会式」の期間中は聖霊院の本尊などを安置した厨子が開帳されるらしいのですが、厨子の前にはぎょうさんのお供え物が積み上げられているため、ご本尊のご開帳とは言いながら実際には見えないそうです。

法隆寺聖霊院外観

人が亡くなった日は忌日であり、忌日の前日に夜通しで行う法要のことを「逮夜法要」というんだそうで、3月22日の前日3月21日には、この法隆寺聖霊院でも「お会式 逮夜法要」が営まれ、その時に限って法要が営まれた後で一般参詣者も内陣まで入って、開けられた扉の真ん前で本尊を拝むことができる、という話でした。
観光ガイドなどには書いてない話で、よほどの「通」の人じゃないと知られていない話のようで、地元の篤信の方々はそのタイミングをめがけて夕方から徐々に集まってくるのだと言っておられました。

大阪勤務時代に何回も法隆寺を訪れましたが、そういう話は聞いたことがありませんでした。

もう一つ。この日の法要では、お坊さんたちが散華を撒き、参詣者はそれをいただけるという話も知りました。これもなかなか得難い貴重なものです。

法隆寺東院伽藍内

 何年かの準備期間を経て、平成31年(2019年)3月21日、ようやく出かけることができました。
 事前の調査では、午後6時に「逮夜法要」が始まるのですが、夕方から徐々に人が集まるということで、後ろの方に並んでしまうと、折角の散華をいただくことができないということで、我々は意を決して午後4時に入堂。それでも最前列ではなく、2列目になってしまいましたが。
 御簾の手前両サイドには、各地から寄せられたお供え物(麩と大根と人参を切ったもの)が積まれ、内陣は(御簾の真ん中からしか見えませんが)餅や果物や木の実などが沢山積まれていました。
 御簾の上の壁には火の鳥が描かれており・・・。

 待つこと2時間。御簾がシュルシュルと上げられ、やがて、午後6時の鐘が鳴るちょっと前から儀式は始まりました。
 内陣の脇部屋みたいなところに蝋燭が10本ほど立てられており、その蝋燭の炎に照らされたのは神主姿の8人の楽団員。(後ろの人の会話では「楽僧」というお坊さんだそうです)
・琵琶
・大太鼓
・鐘
・琴
・鼓
・笙
・小笛
・横笛
 見事な8人の雅楽団です。

 この楽団がなんとお寺で雅楽を演奏し始めたのです。雅楽団なので演奏するのは雅楽であり、それは当然なのでしょうが、聖徳太子の時代には日本古来の神様と大陸伝来の仏様のどっちをあがめるかということで大きな内戦まで行われていたはずなので(聖徳太子&蘇我馬子vs物部守屋)、意外な感じがしましたが、雅楽=神道ということでは必ずしもなく、昔の日本にはこれらの楽器しかなかったはずであり、仏教寺院で雅楽の演奏が行われるからといってむしろ古いしきたりとしては不自然でも不思議でもないことなのかも知れません。

 彼らが厳かに演奏を始めたかと思うと、右手奥の入口から黒ずくめの僧形が10人。一人、また一人と内陣の畳敷きをゆるゆると歩き、全員が各持ち場に着いたところで一斉に座りました。
 一通り雅楽の演奏が終わり、一息ついたタイミングで左手前に座していたサブリーダー格と思しき僧侶が扇子を立てて読経のようなものを静かに唱え始め、そのあとは全員で読経の合唱。しかし聞いたことのないお経でした。ここの宗派は聖徳宗なので、当然我々が日ごろ聞きなじんでいるようなものではないはずです。

 やがて読経と雅楽演奏の合奏が始まりました。違和感のないハーモニー。

 一旦読経がやんだところで、首座の方が祝詞のようなものを唱え始めました。「ようなもの」であり、もちろん祝詞ではありません。何を言っているのかよくわかりませんでしたが、途中で「秦野川勝に命じ」とか「四天王」とかいう単語が出てきて気がついたのですが、要は聖徳太子の事跡の紹介だったようです。
 個人の遺徳を称えるという役割をこのリーダー僧侶が担っているということなのでしょう。推古天皇を支え、遣隋使を正史として派遣したり冠位十二階や十七条憲法など色々な制度を立ち上げた一方、この国の仏教興隆に大きな貢献をなさった・・・・というようなことを語り、感謝の意を表しておられたのでしょう。あと2年で、亡くなってから1400年も経過するというのに、このように長い間法要で事跡が読み上げられ、感謝され続けるというのは、本当にすごいことだと今さらながら感じ入りました。

 その後クライマックスの読経が始まりました。10人の僧侶と8人の楽団員全員参加の大合奏。
 とてもユニークで実に聞き応えがありました。何がユニークかと言うと、読経の途中で突如女性のような声で経を謡う部分があることです。極めて高いソプラノのようなキーで、まるで裏声で歌っているような、と思ったら一気にオクターブが下がって男の野太い声に戻り、また女性声になり瞬時にまたテノールになるというジェットコースターのような音域の上がり下がりがあり、合奏もそれに連れて上がったり下がったり、こんな世界があるんだなあと驚きつつ聞き入っていました。

 散華は読経の途中に、僧一人につき3~4枚程度方々に撒いており、最前列の人の前にもヒラヒラと舞い降りていました。後からいただくものかと思っていたら、目の前に落ちた散華をさっと拾い上げ、自分の手提げに納める最前列の人々。ははあ、そういう風にするんだね、と感心。
 読経の合間に、自分で撒いた散華を拾い集めて懐に仕舞い込む僧侶も。ええええええっ?と思いましたが、声に出すこともできず。

約1時間の法要が終了した段階で、係のお坊さんが声をかけられ、前の方から順番に内陣の中へ、左回りにお進みください、ってな感じで案内していただき、我々も内陣の中に入らせてもらいました。
幸い散華もいただくことができ、内陣の中にある3つの厨子の秘仏も一通り拝ませていただくことができました。
左の厨子には如意輪観音像、聖徳太子の息子の山背大兄王像、聖徳太子の弟の殖栗王(えぐりおう)像、右の厨子にはこれまた不思議なことに地蔵菩薩像、聖徳太子の兄弟の卒末呂王像、聖徳太子の仏教の師匠だという恵慈法師像が安置されています。そして中央の厨子には眉の吊り上がったちょっとキツめのお顔の聖徳太子像。摂政としてのお姿だという説や勝鬘経(しょうまんぎょう)を講じている姿だという説があるようです。

法隆寺の散華の一つ

富山県くんだりから容易には参加することのできない貴重な体験をさせてもらうことができました。

法隆寺五重塔夜景
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デレク・シヴァーズ氏のTEDトーク「ファーストフォロワーのリーダーシップ論」

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先日、あるビジネスプランコンテストを聞きに行ってきました。

その会場でリーダーシップについて短い動画を見せながらのプレゼンがありました。後から聞くと、デレク・シヴァーズという人が「社会運動はどうやって動かすか」というテーマで行われたTEDトークでの動画だということでした。

http://digitalcast.jp/v/12412/

内容は、ある奇妙な踊りをしている人物がいて、周囲の人々がそれを奇異な目で見ているのですが、そのうち一人の人物がその奇妙な踊りの人物に近づいていき、同じ踊りを踊り出し、そのうち三人目がやってきて二人目から踊りを教わり、さらにそこから大勢の人が踊りの輪に加わっていき、一つの運動体になってしまうという動画です。

デレク・シヴァーズ氏は、リーダーシップで大事なのは最初のフォロワーだと言っています。そしてリーダーは最初のフォロワーたちを対等に扱うことが重要だとも言っています。

この動画を見て思ったのは、幕末の長州藩で幕府への(長州征伐に対する)恭順が議論の大勢を占めていた時に高杉晋作が一人立ち上がり、功山寺で挙兵をした時に真っ先に駆け付けた「ファーストフォロワー」は、彼が創生した奇兵隊ではなく(奇兵隊の当時の指揮者だった山形有朋たちは反対して最初は動かなかったとか)、伊藤博文が率いる力士隊など数隊に過ぎなかったという逸話です。高杉晋作と伊藤博文らはその後快進撃を続け、徐々に他の諸隊もそれに続き、遂には藩論を覆した、ということだったと思います。高杉晋作一人だけが暴れ回っても到底そういう事態には至らなかったのではないか、ファーストフォロワーの伊藤博文たちがいてこそ、はねっかえりの行動が回天の偉業にまで至ったのだ、という話だったと思います。

私たちにプレゼンをされた方は、その動画を、ある時ある自治体の職員に見てもらったそうです。その自治体の首長が新しいことに取り組もうとした時に、首長を「裸の王様」にするもしないも、職員の何人かが支えるかどうかにかかっていますよ、ということを伝え、支えないと改革は成し遂げられないのではないか、まず皆さんがファーストフォロワーになってこの自治体を良くしていく原動力にならなければならないのではないか、と伝えたそうです。

これは、やりようによっては動きに加わらない人を排除・差別・懲罰の対象にすることにつながったりする可能性もあり、ある意味危険なことではあります。特に忖度や空気が支配する日本では起こりがちかも知れません。しかしうまく運んだ事例で考えると、ホンダの本田宗一郎氏に対する 藤沢 武夫氏であったり、ソニーの井深大氏に対する盛田昭夫氏であったり 、三国志の劉備に対する関羽と張飛であったりするのではないかという気もします。そういう支えがあったればこそ、天才が活きるのではないか、つまりリーダーシップはファーストフォロワーのフォロワーシップとリーダーによる差別しない接し方が大事、そして、また、輪に加わらない人たちに対しても彼らの価値観を尊重して排除・排斥しない包容力も大事なのではないかな、などと考えさせられました。

ご興味のある方は上のサイトをご覧になってみて下さい。

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未踏に挑むINTERVIEW ファーストリティリング柳井正さんの慧眼

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2019年1月13日(日)の日経新聞2面に、ファーストリティリングの柳井正さんのインタビュー記事が載っていました。

そこからの抜粋です。

インタビュアーの記者さんはアマゾン・エフェクトや大型買収による巨大化を促すような取材姿勢のように感じましたが、柳井さんはそれを脅威としつつ、また日本の政府も含めた社会全体の立ち遅れを問題視しつつ、自分の頭脳で考え自分でやっていくことが大事だと言っておられました。ごく当たり前のことですが、新しい外部の動きに踊らされていることの危険さを認識していかなければならないのではないかなと感じました。これは、先日林修さんが「できる」「できない」「好き」「好きではない」の四象限でやるべきことを考えた場合、「好き」というのは偶然であってたまたまその時代に生きているから「好きかも」と思い込んでいるだけで、あまり「好き」なことに執着せず、「できる」×「好きではない」ことの方が成功するかも知れないよ、と言っていたことと共通するような気がしました。

色々感銘を受けたくだりがありましたが、ここでは4つのコメントに絞って紹介します。

1.AIの導入を考える前に自分の頭脳を鍛えてほしい。「AIにはまねできない意味」を理解し、適切な質問ができる人間にならないと(AIを)使いこなせない。本庶佑先生の話した6つのCが重要になる。キュリオシティー(好奇心)、カレッジ(勇気)、チャレンジ(挑戦)、コンフィデンス(自信)、コンティニュー(継続)、コンセントレーション(集中力)だ。それと、教科書を信じるな、教科書以上の答えを出せ。

2.アマゾンはショッピングセンター型だから、そんなに良い商品は提供できない。AIだけで採寸して、材質やシルエット、好みをつかむことはできない。(自らネットショップを構築して取り組んでいるがゆえの洞察と感じました)

3.うちもお金を借りようと思ったら何兆円でも借りられる。それで(ZARAを運営する)インディテックスと米GAPでも買いますか。バンバン買ってそれで世界一。以上終わりと。それじゃ面白くないよね、自分でやるから面白いんだ。

この心意気、自信。そして、後継者(経営者)に求める当り前の条件。

4.(後継者の条件は)当然だが、能力を備え、みんなに支持される人。みんなで経営するのだから、その人の言うことだったら聞いていいという人でないと経営者にはなれない。能力があっても、気遣いがないとね。

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明日ありと思う心、について(自戒をこめて)

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ある団体で「研修係」を務めていた時、その団体の副会長だった方がいらっしゃいました。2年ほどのおつきあいでしたが、その方が先日不慮の事故で亡くなりました。満61歳とまだお若く、突然のことでした。

「研修係」当時、その業務の必要性や進め方について迷っていた時に、その方はみんなの意見を聞こうと言って全員が集まった場に自ら登壇し、意見を引き出していつ何をやるかということをてきぱきとまとめて下さいました。見た目には、どちらかと言うととっつきにくい感じで、柔軟性に欠けるような印象があっただけに、その時の対応にとても頼りがいを感じました。

その方のお通夜に出席した時に、導師のお坊さんが語られた説教の中に、タイトルの親鸞の言葉がありました。

「明日ありと思う心の仇桜 夜半に嵐の吹かぬものかは」

親鸞聖人が仏門に入るべく天台座主の慈円を尋ねた際、夜になっていたため、慈円から「今夜は遅いから明日夜が明けてから得度の儀式をしましょう」と言われたのに対し、幼い親鸞が「今夜中にお願いします」と言って詠んだ歌だと紹介されました。お坊さんは「親鸞が7歳の折に」と言っておられましたが、色々調べてみると「9歳」とあります。それなりのお年になっている真宗のお坊さんがよもや間違えることはあるまいと思いますが、どちらであっても小学校前半くらいの年齢の子どもが「明日には命がないかも知れません。一刻も早く仏の道に近づきとうございます」と言って「桜の花びらが夜半の風で散ってしまう」ことになぞらえて和歌をうたってしまうことには驚かざるを得ません。あるいは子どものが駄々をこねたのかな?とうがった見方をしてしまうのは私が悟りにはほど遠い俗物のためでしょう。

あれほどの良いお人でも、一夜にして亡くなってしまうくらいにこの世ははかない。だからこそ生きている今を大切に、改めるべきは即座に改める、ということが大事なのだというおしえだと感じました。

 振り返ってわが身を考えると、個人事業者として独立して4年近くになりますが、サラリーマン時代と異なり、必ずしも毎日が定時出勤というわけではなくなり、朝少しゆっくりめに起きる(床の中でだらだらと二度寝などして過ごす)日があります。「明日ありと思う心」が気持ちのゆるみを招き、自分で自分をしっかり律することができなくなってしまったようです。その結果腹回りまでだらりとしてきました。かと言って他人様に依存して強制してもらうというのは問題外です。やはり自分で自分を律しなければなりません。来年、いや、明日からはこの親鸞さんの言葉を唱えながらしゃきっと床から出よう、と故人のご縁に感謝しつつこの年の瀬に決意をしたところです。

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NTT時代の恩師思慕の集まり

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今日は13年前に亡くなったNTT勤務時代の最初の上司を偲ぶ会でした。

集まった方々は私よりもずーっと年長の方ばかりで、私なぞはとてもその方々と席を同じうするような立場ではないと承知しつつ、上司のお子さまたちにもお声をかけ、お父様のご家庭でのお話を聞かせて下さい、ということで、比較的お子さまたちと年の近い私も同席を許された次第。

デザインを頼まれて彫刻で作った電話番号が間違っていることに印刷をかける直前に判明し、大慌てでお子様方総動員で修正の手伝いをした話や、手彫りの版画の年賀状の刷り込みもお子様方の仕事だったこと、小矢部の「ムーミン谷」の命名者は三女さんだったということ、照明のアルバイトに駆り出されていたこと、小学校の頃につかこうへいの黒テントを父に連れられて観に行ったこと、家では甘いものも含めてなんでも召し上がっていたこと、料理を作るのは得意だけど奥様が片付けを担当されていたからこそ成り立っていたことなど、ありし日のお姿が目に浮かぶようでした。尾道で生まれ、8歳か9歳で宮大工だったお父上を戦争で亡くされ、お母様の手で4人兄弟の長男として育ったということも初めて知りました。

一昨年奥様もお亡くなりになり、もはやご夫婦のエピソード、奥様のお話は聞くことができなくなりましたが、お子様方がしっかりそれぞれの場所で元気に活躍しておられるので、富山に集まっていただき、お話を伺うことができました。

私が今日このようにあるのは、この最初の上司と奥様のおかげです。ものすごく色々なことを学ばせていただきました。人の営みの連なりと言いますか、昨日があって今日があるということを改めて思い起こすことができ、感謝に堪えません。

上司と奥様に改めて感謝を捧げます。お子様方もお忙しい中ありがとうございました。合掌。

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交流分析全国大会での村上信夫(元NHK)さんのお話

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 昨日10月6日(土)と今日7日(日)にかけて、富山市のサンフォルテで、交流分析協会の全国年次大会が開催されていました。
 私もスタッフとして今日だけですが、参加して参りました。(やった仕事は3階から2階へ台車一つ運んだだけですが)

 今日の講演は元NHKエグゼクティブアナウンサーの村上信夫さん。
 現在65歳におなりになっており、言葉の伝道師として、全国で言葉の大切さを伝える仕事を続けておられるようです。
 2時間近い講演でしたが、その一部、私の中に大きく印象が残ったところを書き起こさせていただきます。
 以下の内容には、村上さんが語られたことと私がそれから想起したことが混在しています。そのため村上さんの意図とは合っていない部分があるかも知れないことをお断りしておきます。

 ちなみに、村上さん、最初の勤務地は富山だったそうです。私は高校生くらいの時ですが、覚えていないものですね。すみません!

・天気の「いい」「悪い」は自分の都合である。
・正しい(〇)、誤っている、(×)の他に「別解(△)」というものが沢山ある。多くの「別解」を許容できなければ、社会は生きづらくなる。
・自分がいいと思えば、いいと言って良いが、「いい」と言う前に、ちょっとの間を置いてはどうか。間を置くことで、自分とは別の感じ方をする多くの人がいることに思いを馳せる=想像することができる。多様性の理解とか自分以外の人と共生していくためにはそれが必要ではないか。
・『二番目の悪者』(小さい書房)という絵本についての紹介。2014年発売。自分の目で確かめることの重要性。それにより真実に近づく。そして自分が確認したことに基づき、自分の言葉で伝える。伝聞の危うさ。
・筑紫哲也さんは自分で取材し、自分の判断で伝えるべきニュースを伝えていた稀有なジャーナリストだった。
・「伝える」と「伝わる」・・・一字違いだが大違い。「伝える」は自分主体、片想い。「伝わる」は双方向、両想い。
・どうしたら伝わるか。本気で、全力、全精力を使って「言葉」を伝えること。今、この時点で、一番ふさわしい言葉を選ぶこと。
・井上ひさしさんの言葉「やさしく、深く、面白く」・・・難しいことは易しく伝え、易しいことは深く考え、深い内容のことでも面白く伝える、といったような意味のようです。
・『人生は声が決める』という本がある。
・ジャパネットたかたの高田明さん。彼のプレゼンはなぜ素晴らしく、多くの人が買ってしまうか。安いことだけが理由ではなく、高田さんが実際に自分で買って使ってみてその良さや面白い使い方を自分で発見するなどして、それを自分の言葉で伝えるから、ウチにも合うかもと視聴者が自分ごととして引き寄せて感じることができる、からである。そのような受け止め方をしてもらえるように、高田さんは師匠である世阿弥から次のことを教わり、日々工夫していた。
・世阿弥が言っていたことは「我見」「離見」「離見の見」。「我見」は自分の立場。「離見」は相手の立場。「離見の見」はそれらを離れて全体を見る立場、俯瞰ということ。これ、荘子の「道枢」に近いかも知れません。

・村上さんが作詞した「嬉しいことばの歌」より。
・おはよう:朝、鏡を見て、自分で自分に笑顔を作って「おはよう」と言うと自分の心の窓が開く。松岡修造さんは寝る時に笑顔を作って寝るのだそうだ。そうすると、疲れてすぐに眠れるし、顔の神経が笑顔の状態を覚えているので、朝起きた時から笑顔でいられるとのこと。
・ありがとう:渋沢栄一翁のお孫さんの鮫島純子さんは部屋中に「ありがとう」を貼っている。こけても「(大きな怪我に合わずに)ありがとう」、便が出ても「ありがとう」、詐欺に合っても「(大金を盗られなくて)ありがとう」「(まだまだ修行が足りないことを悟らせてくれて)ありがとう」と言っている。「ありがとう」の真逆の言葉は「あたりまえ」。拍手は人の幸せを祈るためにするもの。手の甲にあるのは「節(ふし)」、節を合わせるとふしあわせ、手のひらにあるのは「皺(しわ)」、しわを合わせるとしあわせ。
・いただきます:あなたの命を、私の命にいただきます。
・おかげさま:おかげさまは「かげ」に丁寧語の「お」をつけ「さま」を足したもの。つまり「かげ」=目に見えないものに対する感謝の念。目に見えない存在とはたとえばご先祖。10代遡るだけで1024人の人がいる。それだけの人が自分の先にいて、はじめて自分が存在できている。そのことに感謝。
・よかったネ、だいすき、大丈夫:これはワンセットにして。まずは自分に伝える。そして目の前の相手にも。「良かった」と思うことは幸せホルモンを分泌してくれる。幸せホルモンには「我見」から出る「セロトニン」と人の幸せを我がことのように喜ぶことで出る「オキシトニン」がある。これら両方が出ることで、自律神経のバランスが保たれる、とか。
・おやすみ:おやすみとありがとうはセットで。
・言葉は自己への命令。嬉しい言葉を自分に送ることで、自分を変えていく。

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夢うつつと板橋区企業活性化センター中嶋修センター長のこと

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しばらく意識を失っていました。

その中で私は何かのセミナーをやっていました。同じステージにはアドバイザー席のような机があり、そこに座っていた板橋区企業活性化センター長の中嶋修さんがそろそろと立ち上がりながら、おもむろに「あー、ちょっと喋らせてもらってもいいっ?」とあの独特の口調で、表情は柔らかいままで、無理強いはしないけどもし時間をもらえるなら折角だから、という感じで。
私の方は、講演が終わったら引き続き一人10分ずつの個別相談を予定しているというタイトなスケジュールのため、喋ってほしいけれど時間がオーバーするなあとジレンマに陥っている・・・というところでだと気づきました。

10月1日から5日までの5日間、よろず支援拠点の本部研修を受講しました。所は東京板橋にある「板橋区企業活性化センター」。研修の指導者は同センターのセンター長であり、よろず支援拠点全国本部アドバイザリーボード委員長も務めておられる中嶋修さんという方でした。

研修と言いながら、手法やツールについても教わったのですが、どうもそれらとは異なる別のものをも、合わせていただいたような気がします。それが何かまだ判然とはしませんが、中嶋修さんという方の魂のようなものを少し分けていただいたのではなかろうかと感じています。それが夢に現れたのかな?と、勝手な解釈ですが。

正法眼蔵随聞記という本に「霧の中を行けば、覚えざるに衣しめる。よき人に近づけば、覚えざるによき人となる」(五ノ三)という一節があります。長らくこの意味がわかりませんでしたが、ああ、これがそれか、と少し理解できたような気になりました。一つのテーマで5日間の研修というのは結構長い時間ですが、それだけの時間をともに過ごさせていただくことで、師匠の仕事に対する姿勢や心が、吸気や皮膚を通じてしみ込んでくる、という感じでしょうか。頭では理解できていませんが、自分の中に中嶋さんの魂の一部なりとも取り込めていればいいなあと、夢から覚め、ひとしきり思いました。※写真は「板橋区企業活性化センター」ではなく、センターがある板橋区の入り口入り口の交差点です。埼玉県の戸田公園駅近くにとった宿から、荒川にかかる戸田橋を毎日歩いて通勤しました。

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今年も創業スクールで講師を務めさせていただきます。

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 魚津市にある認定支援機関のアシステム税理士法人さん。
 3年前からこの税理士法人さんが主催する創業スクールで講師をさせていただいています。
 この創業スクールは、中小企業庁が、全国各地で実施される創業支援講座で一定の要件を満たすカリキュラムを「認定創業スクール」として認定し、創業希望者の基本的知識の習得からビジネスプランの策定まで支援する、というものです。
 平成27年に第1回を開催され、私は第2回の平成28年からお手伝いをさせていただいております。
 昨年の第3回からは、通常の講義時間だけではなく、講義終了後に個別相談の時間を設け、受講者の方々の疑問点や相談への対応も柔軟に行っています。それによって、講義を聴くだけでは十分にわからなかった点をしっかり理解していただいたり、ご自分の構想している事業についての深掘りなどを一緒に考えたりしています。
 この8月18日(土)に第4回が開講されますが、市町村の特定創業支援事業の対象地域が新川地域に留まらず、富山市も対象となったこともあり、「にいかわ創業スクール」から「とやま創業スクール」と名称が一新されました。新たな講師も加わり、パワーアップして創業希望者の方へのサポートをしていきたいと願っています。

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知的好奇心を大いに刺激させられたIBMの方の講演

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 ITコーディネータ富山というNPO法人があり、過日、同NPO主催の勉強会に行ってきました。
 目的の一つは、自分の資格維持のためのポイント取得ですが、もう一つは「人工知能とIoTが切り拓く明るい未来と価値創造」という講演テーマに惹かれたことです。
 色々仕事をしている中で、「うちのこれはIoTです」と言われ、よく聞くとLANの中だけで工場内に終始する管理の仕組み話であり、ネットにはつながなかったりするとか、それほど多量でもないのに「ビッグデータを分析して・・・」など、ITとIoTとMtoMとビッグデータとAIの関係や違いが曖昧なまま言葉先行で流通しているような感じがします。
 それはそれで良いのかも知れませんが、機会があれば、ちゃんとそれらのサービスを提供している人のお話に触れようと思っています。

 ということで、今回のお話は、日本アイ・ビー・エム株式会社 マーケティング&コミュニケーション お客様プログラム 北信越地区部長のNさんという方のご講演でした。
 120分という長時間にわたってですが、久しぶりに知的好奇心を大いに刺激された良い内容の講演でした。
 ここでの「良い」とは、もちろん私にとってですが、何が良いって、話を聞いた後で、行動を起こさせるという点が最も大きなことです。
 影響を受けるというのは、行動を起こさせることほど大きなものはないのではないかと思います。(講演の後、色々調べまわったり、購買行動を起こしたりしました)
 ただし、アジテートとか、洗脳とかではありません。
 「これからの時代はこういうものが日常になっていく可能性があります。何ができるかを自分でも色々試しています。」と言って、ご自身が一年間育ててきたトヨタのKIROBOを持参して会話したり、自宅でスマートスピーカーを操作して電気やエアコンのスイッチを入れている様子をスマホで撮影して会場で上映されたり、それらの変化の背景になっている技術動向・政策動向などをふんだんに話していただいただけです。

 以前、NTT勤務時代に、LANの推進をしていたある人は、自費で、当時一台数十万円したルータを何台も買い込み、自宅でLANの構築をして様々な実験をし、その知見に基づいてNTTの後輩に教えるとともにお客様企業を訪問して技術面の解決策を提示するなど、ノウハウを惜しげもなく披露し、北陸地域のLANの普及に努めておられました。
 これはまさに信念を持ったエバンジェリストだと、その姿勢に感銘を受け、自分には何ができるだろうかと考え、パソコン通信に加入してフォーラムに入ったり日経テレコンに個人加盟して記事検索をしたりして仕事に活用していました。
 このように、他人に自発的行動を起こさせる人・話は、随分久しぶりでした。
 また、IBMというと個人的にはThinkPadを会社で使ったという程度しか接点がありませんでしたが、今回の講演でとても身近に感じることができました。

 さて、具体的な講演内容はここには書けませんが、私が書き留めたキーワードを後の控えとして列挙しておきます。

・スパコン 中国100ペタ、次はIBM200ペタ(20京)、後5倍でエクサスケール(エクサ=1000ペタ)となる
・未来投資戦略2018 5年で24兆円、Society5.0がこれからの産業政策の柱
・IT活用は2つの視点から (従来型)SoR(System of Record) (これから)SoE(System of Engagement)
・AirBnBやリフトはDigital Disruption(破壊的産業変革)・・・攪乱的?
・Frienemy=Friend+Enemy
・所有から経験へ
・IBMのWatsonはA4サイズの書類8億枚を1秒で読み取り理解する
・AI(アシスト係)とAGI(汎用型)の違い
・無料で使えるIBMクラウド Watson Assistant
・Qiita 技術者が様々な研究成果などを書き込むサイト
・AIはビッグデータがあって初めて有用なものとなる
・Watsonのリアルタイム翻訳機能
・顧客接点改革
・意思決定支援:経験則や学習のまだ少ない人向け
・20世紀フォックスはAIが映画「Morgan」の予告編(観る人の恐怖心をどの辺で煽るかなどを計算し)をわずか24時間で作った(通常は数カ月かかる) これは創造に近い もちろんデータやロジックやストーリーを人が与えるわけであり、その範囲内でしかできないものではあるが
・ロボット+Watson⇒マルチリンガル(多言語対応)、マルチロボット(仕事の引継ぎをロボット間で行う)、マルチタスク(複数の顧客対応を同時並行に行う)
・IoTの事例 セブン自動車保険 amazonダッシュのようなボタンを車につけ、何か事故があるとそのボタンを押す 即座に保険会社から電話がかる 何もなくても走行状態を常にクラウドに上げ、距離やスピードなどの記録をスマホで見ることもできる(もちろんドライバーたちのデータはクラウド上でビッグデータとして集められ分析され何らかの事業者に届けられ、マーケティングやサービス開発などに活用されている可能性はある)
・エッジコンピューティング ラトック 赤外線リモコンの操作 Alexaとの連動
・池上彰氏の『おとなの教養』リベラルアーツはAI時代になっても必要
・AI時代に求められるコンピテンシーは以下の3つ
 Creativity(創造性)
 Hospitality(コミュニケーション)
 Management(リーダーシップ/マネジメント)・・・つまり共感力と感動。

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小暮太一さんの『超入門資本論』

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 大ぶりの書籍は敬して遠ざけていた感があります。
 特に経済学の本などは、大学生の時にミクロ経済学の入り口で挫折して以来、経済学部生であったにもかかわらずその門に近づくことさえせずにいました。
 カール・マルクスの資本論なんてもってのほかだったのですが、一冊も買いもせず、書店で見向きもせず、ということで果たして良いのだろうか、と思っていたら、偶然町の書店でこの本が目に入りました。
 帯には「120分で読める」というようなことが書いてあり、入門のさらに入門編の書として開いてみるのも良いかもと思い、求めました。

 一読して目から鱗がポロポロポロリとなだれおちました。
 著者の小暮さんがどこまで意訳されているのかはわかりませんが、資本主義の本質をわかりやすく説明されているなと感じました。
 最近、経営革新計画やものづくり補助金などの仕事に携わる機会があり、これらの本質を考える上でも大変役に立つ本でした。

 曰く「商品の価値」とは「原材料」「機械使用料」「労働量」の総和であり、ここからは「利益」は出ない。(私たちが一般的に使っている「価値」とは定義が異なるので注意が必要です)
 商品の値段は価値で決まる。
 但し、同じような商品でありながら、ある会社では倍の労力を要して作っても、その労力分を価格に転嫁することはできない。
 価格は社会平均で決まる。社会平均とは、一般的に社会で製造する平均的なコストのかけ方のこと。よってある会社が社会平均よりも手間暇かけたとしても高い価格で売れるわけではない。
 また、「価値」とは別に「使用価値」というものがある。
 商品の価格は「価値」で決まり、「使用価値」で多少上下する。
 「使用価値」とは使う人のメリットである。

 この考え方を私たちの賃金(労働力の値段)に置き換えても同じである。
 賃金は、労働力を作るために必要な要素の合計で決まる。
 その仕事をするために必要な体力と知力、食事、休息、住居、など。
 たとえば、医師は医師になるために多くの時間をかけて専門知識をたっぷり吸収しなければならないので、単純作業をする仕事よりも「価値」が大きく、賃金が高い。
 営業担当者の場合、営業をするための体力、知力に応じて賃金が決まる。
 会社により大きな利益をもたらす、高い成果を上げる営業担当者は、会社にとっては「使用価値」が高いことになる。
 「使用価値」は、それが高くても賃金に大きな差はつかない。なぜなら、賃金の基本は「価値」で決まり、「使用価値」は多少の上下にしかならないからである。よって売上や利益が同僚の2倍稼ぐ営業担当者がいても賃金が2倍になるわけではない。

 会社の「利益」は「価値」からも「使用価値」からも出てこない。
 需要と供給が一致している場合、投入した資源(かけたコスト、支払った費用)はそのまま「価格」になるので、「利益」はゼロである。
 「利益」は「剰余価値」から生まれる。
 「剰余価値」とは労働者が自分のもらう給料以上に働いて生み出す価値のこと、だそうです。
 原材料は形を変えても仕入れた原材料以上の価値にはならない、機械も同じ、剰余価値は人が手をかけた分からしか生まれない、のだそうです。
 「剰余価値」には「絶対的剰余価値」「相対的剰余価値」「特別剰余価値」の3種類があるそうです。

 「絶対的剰余価値」は労働者を給料以上に長く働かせることによって生み出される剰余価値。資本主義が進むと、剰余価値=利益を追い求めるために、労働者に給料以上の労働をしてもらわないと会社に利益が残りにくくなる、そのために、ブラックや過労死などが増えていく。

 「相対的剰余価値」はデフレ(需要<供給)でものやサービスの値段が下がり、下がった結果、労働者が労働力を維持するために必要な費用が下がり、その結果賃金を下げたが、働く時間は変わらないため、結果として労働量よりも労働者に支払う賃金が少ない状態になることで生まれる剰余価値。

 「特別剰余価値」・・・これが経営革新計画やものづくり補助金などにとって重要なかかわりのある内容です。
 ある会社が最新鋭の機械を導入することなどによって生産性を高め、一定時間で他社よりも多くの商品を製造することができるようになると、他社よりも小さいコストで製造できることになり、社会平均価格で販売した場合は、安いコストで作った分、利益が出る。
 つまり、イノベーションによって出てくる剰余価値です。
 しかしいずれどの会社も同じように最新鋭の機械を導入して同じ程度のコストで作ることができるようになる、又はそれができない会社は淘汰され、同じコストで作ることのできる会社だけが生き残る。つまり低価格の方に引っ張られる。コモディティ化する。
 そうすると、折角イノベーションをして儲かる仕組みを作ったにもかかわらず、ある程度時間が経つと自社の利益はまた少なくなる。自分で自分の首を絞め続けるのが資本主義の仕組みだということです。

 となると、他社よりも若干古い機械を使用しており、老朽化しているので最新鋭の機械を入れる、というのは、そもそも社会平均よりも高いコストで製造していたのを、社会平均並にするというだけであり、これは革新でもなんでもないことになります。もちろん国が「ものづくり補助金」の申請に求めるものも「革新的な」という内容を満たすことが前提になっていますので、こういう例は残念ながら採択されることはないと思います。経営革新計画も同じです。
 とはいえ、新しい機械を導入しても、いずれまたコモディティ化の波に呑まれてしまうというジレンマがあり、企業の経営者にとっては悩ましい課題です。

 大企業は大量生産し続けていくことが必要なため、自社が製造する商品については、できるだけ他社に先駆けてイノベーションするか、ちょっと変わった機能をつける「付加価値」で多少高価な値付けをするか、などが必要になります。
 しかし中小企業は大企業と同じ土俵で競争をするだけの力がないため、できればイノベーションと縁遠い仕事(自社にしかできない技術・技能・・・例えば一品もの、少量生産もの、試作品など)で勝負できるようにして生き残って行くことが必要ではないかと思いました。

 この本には、では労働者はどうやって疲弊せずに生き残って行くか、というヒントも書いてありました。
 それについては、ご関心のある方は是非ご一読をお勧めします。とても読みやすく理解しやすい本でした。(このブログの内容がわかりにくいとすれば、ひとえに私の文章表現の問題であり、著者さんの問題ではありません)

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