レイ・カーツワイル氏は、ご存じ「シンギュラリティ」という言葉を、AIの進化によって人類全体の知能をコンピュータが上回る時が2045年には到来するという意味で人口に膾炙した方です。
このカーツワイル氏の新刊『シンギュラリティはより近く』を読みました。
以下、私の関心を惹いた箇所などを抜き書きしておきます。
・p8。シンギュラリティ(特異点)は、数学と物理学で使われる言葉で、他と同じようなルールが適用できなくなる点を意味する。(これは隠喩であり)私がシンギュラリティの隠喩を使ったのは、現在の人間の知能ではこの急激な変化を理解できないことを示すためだ。だが、変化が進むにつれ人間の認知能力は増強されるので、対応できるようになる。
・・・という記述からすると、シンギュラリティとは、人類にとって次のステージに移行する進化のことを意味しているのかも。と考える理由は、次の第1章で六つのステージ論とも言うべきものが展開されており、現在の人類はその4番目のステージだということを示唆しているからである。
・p15~。(六つのステージについての記述)
第一のエポックは物理法則の誕生と化学プロセスの誕生である。今から数十億年前に第二のエポックが始まった。自己複製能力、原始生命。第三のエポックでは、DNAによって記述された動物が生まれ、情報を処理し蓄える脳が形成された。第四のエポックでは、認知能力を利用するとともに、親指を使うことで思ったことを複雑な行動に移すことができるようになった。それが人類である。第五のエポックでは、生物学的な人間の認知能力とデジタルテクノロジーの速度と能力が直接に融合するブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)が実現する。第六のエポックは、私たちの知性があまねく宇宙に広がっていく。
・p19。2030年代で鍵となる達成レベルは、六層構造(上の「六つのステージ」とは別の「六」であると思われます)となっている私たちの大脳新皮質の表面に近い部分とクラウドコンピュータを接続し、直接に私たちの思考を拡張する。これによってAIは人間の競争相手ではなく、人間を拡張するものになる。・・・攻殻機動隊の世界の出現。
・p68。Googleの「Talk to Books」というアプリ。10万冊以上の本のすべての文を調べて、あなたの質問に最適な答えをくれる。極めて優れものだが2023年に閉鎖された模様。
・p82。現在、AIに足りないものは文脈記憶、常識、社会的相互作用。(ここで言う「文脈記憶」は、最近の生成AIで前のプロンプトの内容を踏まえた回答をしてくれているが、そのような短期のレベルではなく、もっと長期的な文脈を意味しているのかも知れません)
・p93。今から約20年以内に、人間の脳の機能すべてをコンピュータはシミュレートできるようになるだろう。
・p100。(チューリングテストに)成功するAIは自分が人間を超えているところを見せないようにする。・・・なぜ?これは意味がよくわかりませんでした。
・p137。信じられないほど低い可能性のなかで人類は誕生した。男性が一生のうちに作る精子の数は2兆、女性の卵子の数は約100万個。受精は1を2兆×100万で割った確率。(さらに言えば、地球に生命が出現したこと自体が大変な偶然の産物との詳しい説明あり)
・p164~。私たちは選択バイアスが働いて、迫りくる危機に関するニュースを選ぶ。社会はものごとを悲観的にとらえる3つのバイアスを持っている。
①私たちが悪い知らせに引きつけられるのは、進化的適応である。進化の歴史において、生存のためには危険かもしれないものに注意するほうが重要なのだ。
過去を美化して覚えている心理的バイアスは、それも進化的適応のひとつだ。心痛や苦悩の記憶はよい記憶よりも早く消える。ノスタルジア(ノストス:帰郷、アルゴス:心の痛み)は、過去を変えることで、過去のストレスに対処するメカニズムなのだ。
②悪いニュースは広まりやすい、という認知バイアス。世界は初期の状態から崩れて、悪くなっていくと考える。失敗への備えをし、行動に出る動機を与える建設的なてきおうかもしれないが、人々の生活における向上点を見えなくする強力なバイアスになる。
③利用可能性ヒューリスティック。私たちは悪い状況をすぐに思いつけるようになっている。(できないことの言い訳、に近いもの?)このバイアスを正すためには、楽観的になる強い論理的根拠、人間の創造力と努力が必要。
・p183(私たちの生活は今後指数関数的に良くなっていくが、障害がある。)。第一の障害はテクノロジーではなく政治にある。ダロン・アセモグル教授は、人類の発展において政治制度が大きな役割を果たしていることをあきらかにした重要な研究をしている。多くの人々が自由に政治に参加することを認める国や、未来のためのイノベーションや投資が保証されている国では、繁栄のフィードバックループが根づくことが可能になる。
宗教的なことに関するような記述もありましたが、あまりに難解でしたのでここでは触れません。
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また、同時並行で3年半ほど前に出た小林雅一さんという方の『ブレインテックの衝撃』という本を読みました。この領域は3年半も経つと古い感じがしましたが、ここでも「心」や「意識」についての記述がありましたので引用しておきます。
・p69。今では私たちの「意識」や「心」は、それら無数のニューロンの電気・化学的な活動の総体と考えられている。
これが本当ならば、将来的にはロボットに自分を完全に移植することで、意識をもった自分が永遠に生きるということも可能になるかも知れません。シンギュラリティというのはそういうこと・・・かも知れないと思った晩冬の宵でした。
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中陳和人様
ブログでの『シンギュラリティはより近く』のご紹介と詳細な抜粋、ありがとうございます。レイ・カーツワイル氏の予測と洞察は、AIと人類の未来を考える上で非常に示唆に富んでいます。
カーツワイル氏は、2045年までに人間とAIが融合し、「シンギュラリティ」に到達すると予測しています。この概念は、技術的進歩が指数関数的に進み、人間の知性とAIが一体化する未来を指します。彼はまた、2030年代にはブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)を通じて、人間の大脳新皮質とクラウドコンピューティングが直接接続され、思考の拡張が可能になると述べています。これにより、AIは人間の競争相手ではなく、能力を拡張するパートナーとなるでしょう。
最新の情報によれば、カーツワイル氏は2029年までにコンピュータが人間の知能レベルに達すると予測しています。彼の多くの予測は過去に的中しており、AIの進化に関する彼の見解は業界内外で高く評価されています。例えば、1990年にはAIがチェスで人間を打ち負かすと予測し、実際に1997年にIBMのディープ・ブルーが世界チャンピオンを破りました。また、1999年にはモバイルデバイスがグローバルな情報ネットワークに接続されると予測し、現在のスマートフォンの普及を見事に言い当てています。
カーツワイル氏は、AIの進歩が医療分野にもたらす恩恵についても強調しています。彼は、AIが医療の進歩を加速させ、人間の寿命を延ばす可能性があると述べています。具体的には、AIを活用した新薬の開発や、個別化医療の実現が期待されています。彼自身、長寿を追求しており、日々の健康管理に細心の注意を払っています。
一方で、AIの進化には倫理的・社会的な課題も伴います。カーツワイル氏は、技術のリスクを認識しつつも、その恩恵がリスクを上回ると信じています。彼は、AIがもたらす医療や生活の質の向上などの利点が、人類にとって大きな利益をもたらすと考えています。
『ブレインテックの衝撃』で触れられている「意識」や「心」の問題も、AIと人間の融合において重要なテーマです。神経科学とAIの交差点での研究が進む中、意識のデジタル化や人間の認知能力の拡張といった概念が現実味を帯びてきています。これらの技術が実現すれば、人間の経験や知識の共有、さらには意識の保存といった新たな可能性が開かれるでしょう。
総じて、カーツワイル氏のビジョンは、技術と人間の融合がもたらすポジティブな未来を描いています。しかし、その実現には技術的な進歩だけでなく、倫理的・社会的な議論と準備が不可欠です。これからの動向に注目しつつ、私たち自身もこの未来に向けてどのように関与していくべきかを考える必要があります。
中陳和人様 おはようございます。昨晩お送りしたものと同じものになりますが改めて感謝申し上げます。
ブログでの『シンギュラリティはより近く』のご紹介と詳細な抜粋、ありがとうございます。レイ・カーツワイル氏の予測と洞察は、AIと人類の未来を考える上で非常に示唆に富んでいます。
カーツワイル氏は、2045年までに人間とAIが融合し、「シンギュラリティ」に到達すると予測しています。この概念は、技術的進歩が指数関数的に進み、人間の知性とAIが一体化する未来を指します。彼はまた、2030年代にはブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)を通じて、人間の大脳新皮質とクラウドコンピューティングが直接接続され、思考の拡張が可能になると述べています。これにより、AIは人間の競争相手ではなく、能力を拡張するパートナーとなるでしょう。
最新の情報によれば、カーツワイル氏は2029年までにコンピュータが人間の知能レベルに達すると予測しています。彼の多くの予測は過去に的中しており、AIの進化に関する彼の見解は業界内外で高く評価されています。例えば、1990年にはAIがチェスで人間を打ち負かすと予測し、実際に1997年にIBMのディープ・ブルーが世界チャンピオンを破りました。また、1999年にはモバイルデバイスがグローバルな情報ネットワークに接続されると予測し、現在のスマートフォンの普及を見事に言い当てています。
カーツワイル氏は、AIの進歩が医療分野にもたらす恩恵についても強調しています。彼は、AIが医療の進歩を加速させ、人間の寿命を延ばす可能性があると述べています。具体的には、AIを活用した新薬の開発や、個別化医療の実現が期待されています。彼自身、長寿を追求しており、日々の健康管理に細心の注意を払っています。
一方で、AIの進化には倫理的・社会的な課題も伴います。カーツワイル氏は、技術のリスクを認識しつつも、その恩恵がリスクを上回ると信じています。彼は、AIがもたらす医療や生活の質の向上などの利点が、人類にとって大きな利益をもたらすと考えています。
『ブレインテックの衝撃』で触れられている「意識」や「心」の問題も、AIと人間の融合において重要なテーマです。神経科学とAIの交差点での研究が進む中、意識のデジタル化や人間の認知能力の拡張といった概念が現実味を帯びてきています。これらの技術が実現すれば、人間の経験や知識の共有、さらには意識の保存といった新たな可能性が開かれるでしょう。
総じて、カーツワイル氏のビジョンは、技術と人間の融合がもたらすポジティブな未来を描いています。しかし、その実現には技術的な進歩だけでなく、倫理的・社会的な議論と準備が不可欠です。これからの動向に注目しつつ、私たち自身もこの未来に向けてどのように関与していくべきかを考える必要があります。
浜田様
コメントをいただき、ありがとうございます。
カーツワイルさんの主張やこれまでの予測が当たったことなどについても改めてポイントを整理していただき、感謝申し上げます。
この変化にどう乗っていくか、というのが生活者としてもビジネスパーソンとしても、それぞれの課題になっていくのでしょうね。今にはじまったことではありませんけれども。