リンダ・グラットンさんの『LIFE SHIFT』

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 「100年時代の人生戦略」という副題がついています。
 重厚な本ですが、示唆に富んだ良書だと思います。これからの長寿社会という人類がまだ経験したことのない新たな地平に立ち向かっていく上での勇気を持たせてくれる挑戦的かつ実験的な本だと感じました。
 既に私たちの身の回りでも80歳を超えて元気な方が大勢おられます。
 これからはさらに平均寿命が延びるだろうとの予測のもとに、何歳まで働くべきか、金融資産はいかにすべきか、働く者と企業の関係はどうなっていくか、企業はその変化にどう対応していくべきかなど様々な観点から考察が加えられています。
 著者は「教育⇒仕事⇒引退」という従来の一直線かつ一斉行進型のモデルである「3ステージの人生」から、仕事をいくつか変わる人もあるし、途中でしばらく仕事を離れて自分に再教育して改めて登場する人もあるため、エイジ(年齢)とステージ(立場や役割)が分離する「マルチステージの人生」へと変化していくだろうとみています。
 しかしこの変化は急激ではなく「ゆっくり進む」とも言っています。

 このような変化を踏まえ、私たちに必要な資産が4種類あるということです。
1.生産性資産:評判、職業上の人脈、知識
2.活力資産:自己再生の友人関係、健康、人生のバランス
3.変身資産:自己理解、新しい人的ネットワーク、行動力
4.有形資産:マイホームや貯蓄

 この中で「自己再生の友人関係」はとても大事なものだと私も思いますが、子どもの頃から築かれてきた親友関係は、会社の中で仕事をしていくにつれ関係が希薄になっていき、定年退職する頃には友だちが全然いない(仕事関係の“友人”はいても仕事から離れると関係なくなってしまう)という場合もあるようです。
 今はSNSをうまく使えば、昔からの友人とも気軽に連絡を取り合ったり消息をお互いに確認しあったりすることができるようになりました。
 しかし密度の濃い間柄を維持することは容易ではありません。しかし時々そのコミュニティの中に戻って自己再生をすることはとても大事なことだとこの本を読んで改めて感じました。

 仕事をする集団である企業においても様々な課題があると著者は言っています。
 以下は「企業が今後直面し対応を求められる課題」の例です。
1.無形資産形成の後押し(生産性資産、活力資産、変身資産)
2.変身資産構築・維持の支援
3.キャリア制度・仕組みの見直し
4.仕事と家庭の関係の変化への理解(家庭それぞれ家族の役割が異なるし、子どもなどの構成状況によっても一律ではないことへの理解とその事情に応じた対応)
5.年齢を基準にしない(70歳、80歳の人の方が40歳、50歳の人よりも高スキルというケースもあるといったようなこと)
6.実験的な働き方・評価の仕方の容認(人類が経験したことのない取り組みをすることに対する寛容性)

 前著『ワーク・シフト』から寿命が延びていく社会における生き方・立ち向かい方に特に焦点を当てて書かれた著書というふうに私は捉えました。
 『ワーク・シフト』にも想像しうる世の中の変化と、その変化にどう立ち向かっていくべきかなどについての知恵が色々書かれているようなので、この勢いで読んでみようかと思っています。

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