医学者・中田力氏の『日本古代史を科学する』

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 中田力という方(医学者・・・相当権威のある方らしい)の『日本古代史を科学する』という本を読んだ。
 この方が医学者であるということと、本の内容は直接の因果関係はない。
 しかし、これまでの歴史学者とはまったく異なるアプローチで、邪馬台国や出雲王朝の成り立ちを解き明かそうという試みであり、大変興味深く、面白く読ませていただいた。
 日本古代史好きにとっては、たまらなくロマンを掻き立てるテーマである。
 といってもこの著者のアプローチはロマンで行われているわけではない。
 ま、能書きはともかく、魏志倭人伝にある「方三百里」とか「陸行何日」とかいうのを、たとえば、一理を何キロという今風の距離感ではなく、当時の色々な資料に当って、せいぜい60~70メートルだ、という比定をして、そこから、最終的には、邪馬台国は宮崎県の日向灘辺りだ、と推論づける。
 また、染色体科学や中国の王朝の興亡をひもとき、「奴」国も、邪馬台国も、出雲も、いずれも中国南部の「呉」や「越」の戦争難民が逃れてきたという推論を行っている。この中で検討されているヒトの染色体、それと、米の染色体を連動させて、理論づけている考え方がとても面白く、推理小説を読み進むようなワクワク感がある。
 ずっと「科学的」と言い続けておられるのだが、最後の方は、「検証が難しい」と言って、多分に思いで書いておられるようなところも多いが、それは日本古代史の霧の中のことを考えるためおのずと限界があろうと思う。
 それでも十分頷けるところの多い、新たな日本古代史論であると思う。

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