ゲイリー・オールドマンという俳優がいる。
怪優と言ってもいいと思う。
私にとっては、クリストファー・ウォーケンと並ぶ、外国人二大怪優の一人だ。
この人の出演している映画はほとんど観たつもりでいた。
が、観ていないものがあった。
知人に勧められ「告発」というDVDを観た。
かの有名な「アルカトラズ」という牢獄に関する映画である。
「アルカトラズからの脱出」というのはちょっとかっこいい映画だったが、この「告発」は全然違う。
そもそもアルカトラズには、軽犯罪で逮捕された人も含めて収監されていたようだ。
主人公のケビン・ベーコン演ずる受刑者は、わずか5ドルの盗難罪でアルカトラズに収監されてしまった。
その後、誰かの脱獄企図(脱獄は失敗)を手伝ったとして、3年間地下牢に閉じ込められ、真っ裸で日光も当らずまともな食糧も与えられず、時々殴る蹴るの暴行を加えられ、という獄中暴行死寸前の状態まで行って、3年後一般獄舎に移されたのもつかの間、ある囚人を食堂で殺害してしまったことから物語りは別の展開を始める。
色々あって遂にアルカトラズは閉鎖されることになるのだが、そのきっかけになった<実話>であるというところが、この映画のインパクトを強めている点だ。
2時間、目が釘付けになった。
結局、ケビン・ベーコン演ずる受刑者は、無罪を勝ち取りながら、殺人を犯した事実は否めず、そのため再びアルカトラズに戻り、恐らくゲイリー・オールドマン演ずる刑務所の副所長に再びいびられ、今度は全く容赦なくいびられ、結局地下牢で死体となって発見されるに及ぶ。
なんとも納得のいかない終わり方なのだが(そのシーンは出てこないが)、事実に基づいて作られた映画である以上、事実を歪曲してはいけないのであり、それは事実である以上、目をそむけられないことだ。
カエサルが言っているらしい。
「人間は自分の見たいと思う現実しか見ようとしない。」
しかし見たいと思わない現実の方がいかに多いことか・・・。
それを冷徹に見て、自分の目に焼きつけ、腹に落とし、咀嚼し、現実に立ち向かうというふうにしていかないと、本当の解決策は出てこないものだろうと思う。
そんなことを考えさせられる映画だった。
異常人格者を演じさせたらピカイチのゲイリー・オールドマン。
ゲイリー・オールドマンの怪演を超える重厚な映画だった。