フォト・リーディングでジョージ・フリードマンの『100年予測』を読んだ。
ここ2~3週間ほど、ベストセラーが続いている本だ。
欧米では今年の早い時期に既に大ヒットしていたようだ。
未来予測ものであろう、と勝手に解釈して買い、表紙を見るとそうではないことがわかるにも関わらず、相変わらず読む直前まで、未来予測ものだと思い込んでいた。
もちろん未来予測ものではあるのだが、科学技術で暮らしぶりはこう変わる、といったようなSF的なものではなく、どことどこが戦争して、どこが衰退して、といったような極めてポリティカルな内容だった。
しかも楽観的なことは全然書いてない。
地政学と「歴史は繰り返す」という格言に基づいて、冷厳に今後の世界のパワーバランスを述べたものだ。
結論を書こう。
21世紀は引き続きアメリカが覇権を唱え続ける時代だ、と言う。
そしてこの本は、あくまでアメリカを中心に書かれた政治・軍事の本だ。
続けて言う。
アメリカに挑戦する勢力は色々出てくる。
今後中国とロシアが強大になるが、中国は豊かになればなるほど分裂の方向に向かい、ロシアは資源大国となり再び冷戦を招くが、かつてのソ連のような力はなく、やがて瓦解する。2020年にはこれらの国は力を弱めてしまう。
その後弱った中国とロシアの空洞を埋めるため、東からは日本が、西からはポーランドとイスラムの盟主となる、かつてのオスマン帝国トルコが勢力を拡大する。
アメリカはそれをある程度は応援するが、増長しすぎた日本とトルコを押さえにかかる。
日本とトルコは同盟を結び、アメリカの軍事力を叩こうと奇襲攻撃をかける。
2050年に戦争が勃発する、とフリードマンはシナリオを描く。
が、最終的にはアメリカが勝つ。
その時代の軍事力は、宇宙で発電してマイクロウェーブで電力を送り、通信ネットワークで結ばれたロボット(もしくはロボットスーツを身につけた超ハイテクな兵士)たちが主力であるという。
さらにその後は現在GDPでは十数位にある、メキシコなどが台頭し、やがてアメリカすら脅かす存在になる。
なぜ日本とトルコが同盟を結んでアメリカの覇権に対抗しようとするのか。
その理由は多分に地政学的な分析によるものらしいが、力が弱まったエアポケットに、吸い込まれるようにして近隣の諸国がそこに入っていくのは、自然なことだろうとは思う。
とにかく、近未来ものとしては十分刺激的な本だし、SF戦記小説としても面白かった。
個人的な希望としては、アフリカ諸国や東南アジアやインドなどがもっと出張ってきてもおかしくないのではないかと思うのだが、ポリティカル予測の世界では、これらの国々は、あまり力が強くならないだろうとの予測なのか、それとも著者がそれらの国々のことをあまり知らないのか。それはわからない。