久しぶりに家で映画を観た(ヒストリー・オブ・バイオレンス)

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 風呂や食事を終えてくつろぐ時間がだいたい夜の10時頃。
 いつもその時間帯はニュースを見ている。
 長い場合は11時半頃まで見ている場合もある。
 そのため家で映画を観ることが最近ほとんどなかった。
 昨日は「少しくつろごう」と思い、ニュースはそこそこにして10時過ぎから映画を観た。
 「ヒストリー・オブ・バイオレンス」という映画である。
 95分ぐらいの比較的短いものなので、過去にも何度か観ようとしたことがあったが、なんとなく重い内容のような気がして、精神的に強い状態の時でないと、対峙できないように思い、ずっと観ることができなかった。
 そういう意味では「ショー・シャンクの空に」のようなずっしりとした重さを想像していたのかも知れない。
 「ヒストリー・オブ・バイオレンス」というのは、そのまま訳せば「暴力の歴史」ということになるのかも知れないが、世界史とか日本史とかいった類の歴史ではなく、極めて個人に属する物語であり、その個人の思い出したくない過去にまつわる物語である。
 地方の町で平凡に家族と暮らす穏やかな喫茶店の主人、が主人公である。
 たまたまその店を訪れた無法者を一撃の下に退治してしまったために、一躍有名人になってしまい、そのニュースが過去に関わりを持っていたギャングの目に止まる。
 そして平凡で幸せだったはずの彼の生活に暗い影が忍び寄る。
 ・・・。
 最後は、この主人公の強い意志でギャングに勝ち、よろよろと、どことなく自信なさげな普通のおじさんの顔で家族の元に戻り、家族はそれを全てわかった上で、静かに涙を流しながら受け入れてくれる、という結末であった。
 イヤな気分ではなく物語を観終えることができた。
 なんだか確信めいたものが、心の中に錨を下ろすように芽生えたような気がした。
 
 ゆっくりしたストーリー展開の中に、時折出てくる物々しさ。
 目を覆うような恐怖や心臓がドキンとするような効果音などはないが、やはり重々しい映画だった。
 決して重苦しいではなくあくまで重々しい、である。
 主人公は、初め、過去を忘れているのかと思わせるような、本当に記憶喪失ではないかと思うような演技だったのが、最後には過去のことは全て記憶していながら別人になりきっているということが我々にもわかる、というとても工夫された作りになっていた。
 それ(すっとぼけた別人ぶり)を見事に演じ、しかも平凡な街のおじさんの顔と、殺人マシーンのような冷酷な面持ちを使い分けていたあたりが、後になってすごい役者だなと思った。
 主役はヴィゴ・モーテンセンという人で、「ロード・オブ・ザ・リング」でも有名な人らしいが、私は初めてだ。
 また私が会社の広報担当だったときに大変参考にさせてもらった「ブロードキャスト・ニュース」でアナウンサー役を演じたウィリアム・ハートが主役の実の兄の役で出ていた。
 なんだか三流役者のような・・・と思っていたくらい、ギャングの大ボスとしては貫禄がなかったが、エンディングのクレジットを見ていて、この人の名前があったので、思わず、えっ?と驚いたくらい演技が上手くなかった。でも助演男優賞をもらったらしいが。
 監督がなんとデヴィッド・クローネンバーグ。
 これも驚きだ。
 というより、ははあん、なるほど、この人の映画だったんか、と得心したような気がした。
 この監督については、社会心理派、っていうと安直な言い方かも知れないし、なんのことかよくわからないかも知れないが、人の心の奥襞にまで入り込むような、そんな映像、そんな語り部という感じを受けている。
 この人の作品で最も好きな映画は、クリストファー・ウォーケン主演の「デッド・ゾーン」である。
 こういうサイコチックな、でも人の心の多感な動きを捉えた、やや現実から離れた、そんな映画作りが得意な人なのではないか。
 これからもいい作品を作り続けて欲しいものだ。
 良いウィークエンドを過ごすことができた。

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